事業を始めるなら「個人事業主」か「会社設立」か…迷ったときの5大比較ポイント【司法書士が解説】
(5)継続性の違い(図表6・7)
◆1.事業の存続可能性の違い (法人の場合) 法人は個人と独立した存在です。法人(会社)は、設立時に法人格を取得し、会社が個人とは独立した存在(法的主体)として認められます。ゆえに経営者が変わっても法人としての事業は存続します。このため、会社は基本的に半永久的に存続可能です。 (個人の場合) 個人事業は、事業主個人が事業を運営している(個人事業主と事業が一体化している)ため、事業主の健康状態やライフステージに強く依存します。つまり、事業主が事業のすべてを直接管理し、事業と個人は法的に一体であるため、事業主の死亡や引退、病気などによって事業そのものが終了する可能性があります。 ◆2.事業承継の違い (法人の場合) 法人の場合、株式を通じて事業を承継することができ、親族や第三者に株式を譲渡することで会社の所有権が引き継がれます。これにより、事業の財産や負債、契約も法人として引き継がれるため、スムーズな事業承継が可能です。また、M&Aなどを通じて法人全体を他の企業に売却することもできます。 (個人の場合) 個人事業は他人に引き継ぐことが難しいという特性があります。事業主が引退する際、事業を家族や第三者に引き継ぎたい場合には、事業資産やノウハウを引き継ぐ手続きが必要ですが、法人化している場合と比べて法的な枠組みが少ないため、スムーズな承継が難しいことがあります。 例えば従業員や家族に事業を引き継がせたい場合でも、事業の一部や取引先との関係、名義をどう引き継ぐかなど、事業主個人の信用や取引の履歴が大きく影響するため、個人事業の承継は手続きが煩雑です。 ◆3.事業終了の違い (法人の場合) 法人を終了させるには、会社の解散手続きを行い、残った資産や負債を清算する必要があります。これは会社法に基づく手続きです。自由に廃業する個人事業主とは違い、法的な手続きが必要なのです。 (個人事業の場合) 個人事業主が亡くなった場合や事業をやめたい場合、事業は個人の意思で自由に廃業できます。ただし、その際には事業に関連する債務や税務手続きなどをすべて整理する必要があり、事業の資産や負債も個人が処理しなければなりません。 次回は、個人が会社をつくるべきかの判断基準や、会社設立のメリット・デメリットを紹介します。 加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
加陽 麻里布