事業を始めるなら「個人事業主」か「会社設立」か…迷ったときの5大比較ポイント【司法書士が解説】
(4)信用力の違い(図表5)
◆第三者から見た信憑性 一般的に、会社のほうが社会的信用力が高いといわれています。その理由は、会社の場合、最寄りの法務局で登記事項証明書を取得することで、設立日・本店所在地・事業目的・資本金の額・役員の情報などの重要事項を誰でも簡単に確認できる点にあります。個人事業の場合はそもそも登記などをする必要がないため、取引先からすると、事業者の重要情報をいつでも簡単に確認することはできません。 ある程度規模の大きい会社は、個人事業主と取引をしない方針を掲げるところもあります。特に上場会社などは、個人事業主と取引をすることは滅多にありません。大手企業と取引をするためには、会社組織にすることが最低条件になるのです。 ◆契約主体の違い 会社は、法務局に登記をすることで法人格を取得し、さまざまな経済活動の主体になることができます。例えば銀行口座を開設したり、不動産や車の名義人になったり、携帯電話の契約当事者になったりなどです。一方で個人事業は、株式会社などの名前を使って口座開設したり契約したりすることはできません。入出金などは個人名義の口座を使うことになります。 ◆事務所や店舗を借りる場合 事業用建物の賃貸借契約においては、連帯保証人を要求されることが多々あります。このとき、会社であれば会社が契約の当事者になれるので、代表取締役個人が連帯保証人になることができますが、個人事業主の場合は第三者に連帯保証を依頼しなくてはならず、事業開始のハードルが上がります。 ◆インターネット市場においても差が生じる 「.co.jp」は、日本国内で登記している株式会社や合同会社などの会社のみに使用を認めており、このドメインを使用することは信用に繋がります。 また、事業としてインターネット上で商品販売などをする場合、オンラインショッピングモールなどに出店すると思いますが、個人事業主の出店を認めない厳しい出店基準を設けているモールも存在します。 ◆資金調達 金融機関からの融資においても、会社と個人事業主では会社のほうが有利といえます。まず信用枠の考え方が異なります。多くの金融機関においては、会社については明確に融資基準を設けているため、一律、必要資料から融資を行うかの判断を簡単に行うことができますが、個人の場合は基準が明確ではありません。 個人の場合、住宅ローンなどを組んでいて信用枠をめいっぱいまで使ってしまっている場合も多く、事業資金を借り入れる余裕がない場合があります。また、個人事業主はプライベートと事業における財布が同じである場合が多く、融資した資金が本当に事業に使用されているのかなどの確認が難しいことも、事業融資が難しい理由として挙げられます。 株式会社の場合は、銀行から借入を受ける「間接金融」だけでなく、身近な人から出資を受ける「直接金融」のファイナンス方法をとることができる点も大きな魅力です。株式会社は出資額に応じた株式を発行し、出資者は会社経営に参加をしたり、配当を受け取ったりなどの恩恵を受けることができます。 一方、個人事業主の場合は株式を発行することはできませんから、身近な人から資金を調達する場合は「出資」ではなく「貸付」を受けることになります。この場合、利息の問題なども発生します。