事業を始めるなら「個人事業主」か「会社設立」か…迷ったときの5大比較ポイント【司法書士が解説】
(2)設立と運営の違い(図表2)
◆1.設立の違い (法人の場合) 法人を設立するには、法務局に会社を登記する必要があります。設立にはいくつかのステップがあり、定款の作成や認証、資本金の払い込みなどが求められます。この手続きには、専門家(司法書士など)のサポートが必要な場合も、多くの時間とコストが発生します。 設立手続きの流れは次のとおりです。 (1)会社の基本事項を決定(商号、事業内容、役員、資本金など) (2)定款の作成および公証役場での定款認証(株式会社の場合) (3)資本金の払い込み (4)法務局での会社設立登記 (5)設立後、税務署や各種役所への届出 (個人事業の場合) 一方で、個人事業を始める際の手続きは非常にシンプルです。事業開始にあたっては税務署に「開業届」を提出するだけで、法務局などでの登記手続きは不要です。通常は費用もかかりませんし、設立にかかる時間も少ないため、すぐに事業を開始できます。 設立の流れは次のとおりです。 (1)開業届を税務署に提出 (2)必要に応じて税務関係の届出(青色申告など) (3)必要な許認可の取得(特定の事業に限る) ◆2.運営の違い (法人の場合) 会社法に基づく運営が必要です。株式会社であれば、株主総会や必要に応じて取締役会などの経営機関を設置します。また、事業年度ごとに決算報告書を作成したり、役員の任期が来るたびに法務局へ登記内容の変更申請をしたりなどの法的な手続きが多く存在します。また、法人には法人税が課税されます。会計処理は個人事業より複雑ですので、決算はアウトソーシングする場合が多く、運営に一定のコストが発生します。 (個人事業の場合) 個人事業は基本的に1人で運営されることが多く、意思決定や運営はすべて事業主が行います。株主や取締役会などの経営機関が不要なため、運営が非常にシンプルで、迅速な意思決定が可能です。 また、個人事業主は決算報告書の提出義務もないため、書類作成や手続きの負担が軽いです。 個人事業では主に所得税が課税されます。青色申告を行うことで、特別控除を受けたり、損失の繰越控除を行ったりが可能です。会社ほどの厳格な会計基準は求められませんので、1人で運営・業務などをすることができるでしょう。