事業を始めるなら「個人事業主」か「会社設立」か…迷ったときの5大比較ポイント【司法書士が解説】
(3)税務の違い(図表3・4)
◆1.課税対象の違い (法人の場合) 法人には法人税が課税されます。法人税は、法人が得た利益(収益から経費を引いた金額)に対して課される税金です。個人事業と異なり、法人は独自の法人格を持つため、法人そのものが納税義務を負います。 また法人税は、法人の利益に対して一定の税率が適用され、通常は23.2%の税率が適用されます(中小企業の場合、所得800万円以下の部分は15%)。 住民税(法人住民税)や事業税(法人事業税)も課税され、これらが総合的に法人の税負担を決定します。 (個人事業の場合) 所得税が課税されます。個人事業主は、事業の利益(収入から経費を引いた額)がそのまま「個人の所得」とみなされ、所得税の対象になります。 所得税は累進課税制度が適用され、所得が増えるほど税率が高くなります。具体的な税率は5%から45%までの範囲です。住民税や個人事業税も別途課税されます。 ◆2.税率と計算方法の違い (法人の場合) 法人税は、利益に対して一定の税率が適用されます(図表4)。法人税は、所得税の累進課税とは異なり、一定の税率が課されます。法人には、法人事業税や法人住民税も課税され、全体としての税負担率は実効税率で30%前後になることが一般的です。 (個人事業の場合) 所得が増えると税率が急激に上がるため、利益が大きい場合は税負担も大きくなります(図表4)。 ◆3.控除・節税の方法の違い (法人の場合) 法人には、個人事業主にはない経費計上の幅広さや、複数の節税方法が用意されています。経営者自身に給与(役員報酬)を支払うことで、法人の利益を抑え、その結果、法人税負担を軽減することができます。この役員報酬は会社の経費として計上でき、所得税の累進課税よりも税率が低くなることがあります。 また、社員の福利厚生費(保険料、社宅費、交通費など)を経費として計上し、法人税を節税できます。 そのほか、特定の経費(減価償却費など)を繰延べて計上することで、利益を翌年以降に分散し、税負担を平準化することができます。 (個人事業の場合) 個人事業主は、青色申告を行うことで、いくつかの税務上の優遇措置を受けることができます。青色申告特別控除として、最大65万円の控除が受けられます。また、赤字の繰越控除が可能で、赤字を翌年以降3年間に渡って繰り越すことが可能です。赤字の年は、将来の利益と相殺して税負担を軽減することができます。その他、家族従業員への給与控除として、専従者給与という形で、家族に給与を支払い、事業の経費として計上することができます。