小川航基のヘディングは全身の重さが乗っている。専門家が解説、身体の「しなり」を利用したバネの重要性【動作分析コラム】
⚫️単純に「首を振る」だけではいけない理由
10月11日に行われたW杯・アジア最終予選のサウジアラビア代表戦。途中出場した小川は、伊東の右サイドからのコーナーキックのボールを、上半身の「捻り」を上手く使ってファーサイドへ叩きつける形の強烈なヘディングシュートを決めています。 ヘディングで上半身を捻る動きを要求される場合、単純に「首を振る」だけでは身体の重さを乗せられないため強いボールを飛ばすことが出来ず、また、目線や首が十分に固定されていないことによってインパクトもぶれやすくなるため、精度も欠いてしまいがちです。 対して、小川は首を固定した状態で、スイングに併せて(みぞおちから上の部位にあたる)胸郭の捻り(左回旋)と横に倒す(左側屈)動きが連動することで、結果的に頭の向きを変えながらインパクトする、というフォームになります。 小川はコア・スタビリティを効かせた状態で、背骨や肋骨をしなやかに使える動的柔軟性の高さが土台にあるため、このような局面での捻るヘディングの質も高くなります。 もう一点、ストライカーに必要なヘディングの技術が象徴的となったシーンがあります。
⚫️高校時代から見せていた小川航基の身体能力の高さ
遡ること約8年前、第94回全国高校サッカー選手権の準々決勝、小川を擁する桐光学園対青森山田。世代別の日本代表にも選出され超高校級と称された小川は、この年代から高度なヘディングを披露しています。 右サイドからのクロスをファーサイドで押し込んだゴール。このようなシーンはただ当てるだけ、と表現され簡単なプレーだと思われがちですが、実際には首を固定しながら胸椎下側のカーブを反らせてしっかり「引き金をひいた」状態でインパクトしています。この動きにより、身体全体の剛性が高まることでボールの反発を大きく出来るため、スピードのないクロスボールでも角度を変えて跳ね返すことが可能になります。 ヘディングは、ジャンプ能力と上半身の基礎体力が要求され、また、いわゆる身体・空間認知能力も必要となるため、身体にしなやかさのある育成年代の段階から洗練させていきたい技術の一つになると考えています。