小川航基のヘディングは全身の重さが乗っている。専門家が解説、身体の「しなり」を利用したバネの重要性【動作分析コラム】
⚫️ヘディングの土台となる「引き金をひく」動作とは
ヘディングで「しなり」を生むためには、テイクバックで上半身をしなやかに動かすことが要求され ますが、腰から反って固めるのではなく、腹~腰回り・下腹部の筋群によって体幹を安定させる「コア・スタビリティ」が機能した状態で、ちょうど背番号の下側にあたる胸椎下側のカーブからスッと後ろに反らせていくことがキーポイントになります。 私は、ちょうど弓矢を後ろに引いているようなこのテイクバックの姿勢を「引き金をひく」と表現していますが、小川のようなトップレベルの選手ほど背骨や肋骨のしなりを使って胴体部分の重さをグーっと後方に引っ張る動きになるため、上半身の「しなるバネ」が強くなります。 結果的に、スイングで胴体部分の重さがバネ感をもってビュンと勢いよく前方に移動することになるため、頭の振り出しに身体の重さが乗った強いボールインパクトが可能になります。フィニッシュでは、背中が前に曲がってちょうど「みぞおちの前に胸を乗せる」形になります。
●ボールへのインパクトをより強めるための「くの字」
ヘディングで見られる上半身を反らす↔︎曲げる動きは、腕の振りに合わせて「引き金をひく」↔︎「みぞおちの前に胸を乗せる」ことが土台となりますが、インパクトの瞬間には首をしっかり固定することでボールの反発を大きくする必要があります。 さらには、このシーンでは、スイングで股関節を支点として身体を「くの字」に折りたたむ動きも連動しています。この動きをするためには、テイクバックでの空中姿勢でコア・スタビリティを効かせながら「引き金をひく」ことに併せて、膝を曲げた状態で両脚の重さがブラーンとぶら下がっている必要があります。 これらの動きによって、両脚の重さをエネルギーとして股関節を曲げる筋群がバネのように使われることになるため、下半身の振り戻しに併せる形で股関節から上半身を前に倒す動きも連動してインパクトに加わることになります。 同試合で、久保建英の左サイドからのコーナーキックから生まれた小川の1得点目のシーンは、テイクバックでの「引き金をひく」動きを省略していますが、ちょうどインパクトで首を固定しながら「みぞおちの前に胸を乗せていく」ことによって、身体の重さを乗せてボールを押しこむ形のヘディングが可能となっています。