“最も長期的で困難な社会課題”の解決に向けて…「高レベル放射性廃棄物の処分」における日本と世界の現状を解説
◆最終処分地を選定するプロセス
地層処分は国際社会の共通認識であり、原子力発電を利用している国々は地層処分をするために動いています。日本では2000年に最終処分法が成立し、処分地を選定する方法が定められました。選定プロセスは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階です。 ・文献調査(第一段階) 学術論文などの文献やデータを基に地域の地層などを把握する調査。 ・概要調査(第二段階) 現地でボーリングなどをおこない、直接地下の状況を調べる調査。地上と空中から電波を飛ばし、その跳ね返りから地形や地質を調べる、最新の技術を駆使した調査も実施予定。 ・精密調査(第三段階) 地下に坑道を掘って調査施設を作り、地下水の湧き具合、岩盤、地質などを確認する調査。 なお、選定プロセスには約20年かかる想定で、調査期間中は放射性廃棄物を一切持ち込まないこと、それぞれの調査のあとには必ず地域の意見を聴き、意見に反して先には進まないことなどが決められています。 調査をする地域は、市町村自らの応募または国からの申入れを市町村が受諾することで決定します。「実は、すでに3つの村と町で文献調査が実施されています。応募いただいた北海道の寿都町、国からの申入れを受諾していただいた、北海道の神恵内村と佐賀県の玄海町です」と横手さん。寿都町と神恵内村の文献調査は約4年かけて今年の11月に報告書が公表されました。玄海町は現在進行中です。
◆諸外国の高レベル放射性廃棄物における取り組み
続いて、各国の調査段階について。日本同様、文献調査の段階なのがドイツです。第二段階の概要調査をおこなっているのはイギリス、スイス、カナダの3ヵ国。第三段階の精密調査をおこなっているのがロシアと中国です。 フィンランド、スウェーデン、フランスは最終処分地の選定が終了しています。アメリカは最終処分地を選定しましたが、審査が中断しており、スペイン、ベルギー、韓国においてはまだ調査をおこなっていません。 フィンランドは、エウラヨキという南西部に位置する町を最終処分地に決定しました。住民の理解について、横手さんは「町長の話によると、町と事業者間で活発でオープンな対話が続けられたことにより、信頼関係が構築され、その結果、町民の多くが最終処分を支持しているそうです」と解説。また、スウェーデンのエストハンマル市では、研究者や見学者が世界中から訪れ、ハイテク技術が集まる工業地域になるイメージが市民と共有できたそうです。