それぞれの視点で“形”について考える「マメ クロゴウチ」と「アンリアレイジ」、気になる若手も目白押し 2025年春夏パリコレ日記Vol.1
会場は、パリ北駅至近のレストラン。待っていると実際,テリーヌなどの食事が出てきました(笑)。でも、インビテーションはくだびれたTシャツの写真だったんですよね。レストランなのにTシャツ?と思っていたら、普段使いのカジュアルな素材で作るドレスアイテムが登場しました。例えば、純白のレースなどで作りがちな、布を斜めに配置してアシンメトリーに仕上げるドレスやスカートは、スエット素材。トレンチコートもギャバジンではなく、どうやらスパンデックスのような素材ゆえ、ピタピタです。スエットでも、ドレスなら由緒正しいレストランも入れてくれるでしょうか(笑)。レースを添えたシャツとVネックニットのコーディネイトは、どうやら一着のウエアです。曲線のウエストを持つセットアップも、昔「ジューシー クチュール(JUICY COUTURE)」あたりがよく使っていた、テロテロに洗ったベロア素材。多分、究極のラクチンウエアです。まだまだ荒削りではありましたが、その発想はユニーク。引き続き注目したいと思います。
で、藪野さんとは「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」で合流でしたね。藪野さんは先に到着して、着想源になった作品展示を見ていましたが、何があったの?
「マメ クロゴウチ」は日常にある形を服に “提灯“から“豆”までが着想源
藪野:今回、黒河内さんが着目したのは「かたち」。昨年のコレクション制作の中で作陶に取り組み、そこで粘土による成形の難しさを経験したことから形状への関心を強めていったといいます。その中でたどり着いたという日本の伝統的なデザインや工芸品をまとめた書籍「日本のかたち」をはじめ、陶芸家ルーシー・リー(Lucie Rie)によるボタンやいろんな形の石、提灯作りに使う木型などがありました。冗談ではなく、沖縄で拾ったという「豆」もありましたね(笑)。被写体を黒く塗りつぶすことで、その純粋な「かたち」を際立たせたという日常の中にあるオブジェの写真も印象的でした。「かたち」に焦点を当てたコレクションとだけ聞くと、誇張されたシルエットや大胆なデフォルメをイメージしがちですが、そこは「マメ クロゴウチ」。繊細な表現で、日常に溶け込むアイテムに仕上げていました。