きくち体操創始者・菊池和子 90歳:体はこんなに希望に満ちてできている
みんなと一緒だから頑張れる
菊池は今も、川崎市にある本部の直営スタジオで、1時間15分のレッスンに立つ。毎週ここに、中高年の女性を中心に1クラス50人近くの生徒が集う。黒のレオタードに赤のカシュクールシャツ姿の菊池が登場すると、ピーンと空気が張り詰める。ここから体操が終わるまで、菊池はずっと動き続け、話し続ける。休むということがない。スタジオに置かれた骨格や筋肉の模型までもが、熱心に耳を傾けているように見えてくる。 入会17年目になる佐渡友順子さん(82歳・主婦)がしみじみと語る。「始めた当時は、横断歩道も渡り切れないほど。狭心症もありニトロを必ず携帯していました。でも週に2~3回続けてきたおかげで、体の弱かった昔がうそのように元気になれたんです。不調が起きても自分で良くしていくことを知っているので、この年までなんとか乗り越えてきました。先生がレッスンの前にしてくださるお話、あのお話を聞くと感動して、いつも頑張ろうって思うんですよ」
場の救済力
レッスンの光景を見ていて思うのは、こんなに溌剌(はつらつ)とした菊池先生という見本が目の前に屹立(きつりつ)しているインパクトが強烈なことだ。生徒にとってはこれ以上の説得力はない。菊池の発する壮大な「気」が生み出す「場」の力。その力が生徒の一人一人を刺激する。 数少ない男性参加者の一人、川本輝一さん(83歳・元IT関連エンジニア)の話を聞いて、思わず笑ってしまった。「先生には、一人一人がハッキリ見えてるんですよ。先生の放つ“気”はもう半端じゃない。正直言って怖い。毎週しごかれてヒイヒイ言ってますよ」。そう言いながらも、気がつくと7年も通い続けている。 テニスで膝を痛め、その後ヘルニアも悪化し腰の手術までしたが、きくち体操をやって、膝・脚力・頻尿の改善という三つものご利益をいただき、先生と時間・空間を共有できる幸運を実感しているという。まさに「場の救済力」と言えないだろうか。