自衛隊「統合作戦司令部」の機能を同盟網の中で確認する――指揮権並列型体制下での同盟国・同志国等との連携強化
指揮権並列型体制下での調整円滑化の論点とは
朝鮮戦争を戦った韓国や、大陸反攻にこだわった台湾が、アメリカとの指揮権統一に踏み切るか、あるいはこれに前向きな反応を示したことと、日本のケースはかなり異なる。たしかに指揮権調整の在り方は同盟によって多様であろうから、指揮権一体型と並列型のどちらが理想的かは一概には言えない。ただ日本の場合は、アメリカとのあいだで指揮権を切り分けておくことが重視される一方、そのような指揮権並列型体制下で日米間でどのような連携を図っていくかの検討は長らく十分ではなかったといえる。 この状況に変化が見られたのが、「1997年ガイドライン」で「日米共同調整所」を設置するとうたわれたことである。また、続く2015年ガイドラインでは、「同盟調整メカニズム」(ACM)の設置が規定された。このように近年の日米間の指揮権調整は、並列型体制を前提に、実効的な日米共同対処のための情報共有や政策・運用面での調整の円滑化を図るかたちで発展してきた。統合作戦司令部の創設は、1997年ガイドライン以来のこうした流れを推し進めるものと評価できるだろう。 今後の方向性としては、統合作戦司令部をACMの構成組織に加えることや、組織改編されたアメリカ軍と日本側の統合作戦司令部を連携させることなどが議論されている。後者については、アメリカ軍の調整組織を日本に新設する、在日米軍司令官の階級を現在の中将から大将に格上げし、限定的な指揮権を付与する、インド太平洋軍司令官の隷下にある太平洋艦隊司令官をヘッドとする統合任務部隊を常設化する、などの案が報道されている。 また4月4日にリチャード・アーミテージ元米国務副長官やジョゼフ・ナイ・ハーバード大学教授らアメリカの知日派専門家グループが発表した報告書でも、日米間の指揮権並列型体制を前提とした「常設の連合二国間計画・調整事務所」の設置などが提言された。こうした具体策については、今後日米安全保障協議委員会(2プラス2)などの場で協議されると見られている。