ほんわかあったか癒やしのワールド 「さくらももこ展」
【&w連載】晴れときどき展覧会
「あれ、ちびまる子ちゃんって私のことなのかな?」と思ってしまうほど、さくらももこさんの描く世界は、身近で親しみがわきます。我が家では、息子が小さいころ、毎週日曜にテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」を見るのが定番でした。エッセー「もものかんづめ」「さるのこしかけ」も愛読しています。(文・写真、山根由起子) 【画像】もっと写真を見る(9枚)
昭和の子ども時代「あるある!」連発
さくらさんと同じ昭和時代に小学生生活を送った私にとって、「あるある!」を連発してしまいたくなるのが、さくらももこワールドです。東京・六本木の森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催中の「さくらももこ展」に足を運び、どっぷりとひたってきました。代表作を含む約300点のカラー原画や直筆原稿に思わずクスリ、にこり、うわーい! ご存じ、「ちびまる子ちゃん」は静岡・清水を舞台に、のほほんとしたお調子者の小学3年生のまる子が友達や家族と過ごす日常を描いた作品です。友達同士で回した不幸の手紙にドキドキしてしまったり、あこがれの歌手山口百恵さんのショートカットに似せようと、前髪を横分けにしたり……。「おーっ、これは私もやった」と思う数々のディテールが、展示の原画にも描かれています。授業参観の日に恥ずかしいことをやらかしてしまったり、好きな男の子のアルバム写真をこっそり見たりといった体験は、きっと誰にでもあるでしょう。 まる子ちゃんの級友たちもユニークです。私は自分と同じ名字の小心者の男子「山根」推しで、心配性で胃が痛くなるところがそっくりだなあと共感を覚えていました。本展でもたまちゃんや花輪クンら、個性的な友達を原画とともに紹介しているコーナーもあります。 小さい頃はふすまに家族の絵を落書きしていたというさくらさん。子どもの頃から作文が得意で、ある時、「エッセイを漫画で描いてみたらどうだろうか‼」と思いついたそうです。日常生活の何げない風景を、独特のユーモアを込めてスケッチのようにさらさらと作品に描いているからこそ、みんなに「あるある!」と共感されるのでしょう。失敗談や恥ずかしい出来事さえも自虐ネタにして笑い飛ばしてしまう開けっぴろげさも好感を呼びます。 本展で驚くのは、さくらさんのさえ渡るギャグセンスです。ちびまる子ちゃんから派生して、頭と顔が四角い女の子が登場する「ちびしかくちゃん」というセルフパロディー漫画も描いています。なんと、家族全員、顔が四角いのです。 さえない平凡なおじさんにも愛を注ぎ、のほほんとしたおじさんたちが登場する漫画も手がけています。「神のちから」に出てくる尻が売り物のおやじや、毎朝マラソンを続けている51歳の平岡ムネジさんも、かわいい「おじまる子ちゃん」に思えてくるのは、さくらさんマジックでしょう。