なぜボクシングの国民的英雄がライフルを手にしたのか…ロマチェンコに続き3団体統一世界ヘビー級王者ウシクもウクライナ領土防衛軍に入隊
プロボクシングのロンドン五輪金メダリストで、現WBA、WBO、IBFの3団体統一のヘビー級世界王者であるオレクサンドル・ウシク(35)が、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナの首都であるキエフの領土防衛隊に入隊したことが日本時間1日、明らかになった。紛争に関する最新情報を提供することを目的として開設されたツイッターアカウントに軍用装備に身を包みライフル銃を持って兵士と共に立つウシクの写真を投稿したもの。 ウシクは、2月28日にSNSで「団結する時がくる。自分の国にふさわしい息子は、領土防衛のメンバーとなることだ」と、“義勇軍”への参加を表明していた。ウシクは、ロシアのウクライナ侵攻が勃発した際には2月26日に英国グラスゴーで行われるスーパーライト級の4団体統一王者のジョシュ・テイラー(英国)とジャック・カテラル(英国)の世界戦を解説する予定で現地に滞在していたため、一部の評論家やウクライナ国民から「母国の危機に国外へ逃げた」などの批判を受けた。 ウシクは、仕事をキャンセルしてすぐさまウクライナへ戻りインスタに映像をアップ。 「何人か(の評論家)は、私が(英国へ)逃げ出したと言ったが、私は仕事をしていただけだ。私は戻ってきて家にいる。困っている友人たちと共に団結しなければならない。私は本当に私の国と人々を心配している。この戦争を止めなければならない」とのメッセージを「NO WAR」というキャプションを付けて伝えた。 さらに「私はロシアの人々と話したい。私たちが兄弟であるなら、私たちの国にあなたの子供を送るな、私たちと戦うな、と言いたい。また私はプーチン大統領にも訴える。“あなたはこの戦争を止めることができるのだ。ただ座って、条件をつけることなく私たちと交渉してください。私たちの子供たち、妻、おばあちゃんたちは、地下室に隠れている。私たちは、自分の国にいて、みんなを守っている。この戦争を止めろ、止めろ。戦争反対だ!”」との悲痛なメッセージも映像で伝えている。 ウシクは2018年に2団体統一王者の井上尚弥がバンタム級で優勝したことで知られるWBSSのクルーザー級で優勝。決勝では4本のベルトがかけられ4団体統一王者となった。その後、ヘビー級に転向。昨年9月にWBAスーパー、WBO、IBFの3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(英国)を3-0判定で下して、2階級を制覇し統一王者となっていた。ジョシュアが契約にあった再戦条項を行使したため、再戦計画が進んでいたが、今回の軍隊入りで、再戦が難しくなったという見立てもある。それでもウシクには国民のためにリングで戦っているという強い愛国心があり、祖国を守りたいという思いと共にボクシング界を代表する世界的なスーパースターとして「社会平和」「戦争反対」を訴える社会的責任をも感じて、今回グローブに代えライフルを手に取ったのだろう。