〈シューズで見る箱根駅伝2025〉箱根ランナーの9割以上が履いていた“絶対王者”ナイキがまさかの転落…アディダスがシェア1位に大躍進した納得の理由〈出場210選手「着用シューズ一覧表」付き〉
巻き返しを図るナイキの原点回帰
さて、一気に第3党に転落したナイキの逆襲はあるのか。 ナイキの敗因のひとつは、イノベーションを起こし続けなくてはいけない社内文化にあると思っています。ヴェイパーフライもアルファフライも、新モデルがドラスティックに変わりすぎて、選手が求めるものとのミスマッチが生まれてきたと感じます。 その象徴的な出来事がパリオリンピックでありました。 もともとヴェイパーフライは、マラソン元世界記録保持者のエリウド・キプチョゲのマラソン2時間切りを目指して開発されたシューズです。しかし、彼のために開発されたシューズでありながら、パリオリンピックでキプチョゲは、最新モデルのヴェイパーフライ3ではなく、1つ前の2を最新モデル風にデザインしたシューズで走りました。要は「ヴェイパーフライ2で良かったじゃん」という話です。 そこでナイキは、今年のニューイヤー駅伝で新たなモデル(記事末のシューズ着用表では「ヴェイパーフライ4(仮)」と表記)をお披露目しました。トップオブトップの選手だけが履いたこのモデルをじっくり観察してみるとデザインも大ヒットモデル、ヴェイパーフライ2を踏襲したものであることがわかります。 つまりナイキは原点回帰をしたのでしょう。着用選手の結果も悪くありませんでしたから、このシューズで巻き返しを図るのだと思います。
着用率を上げたプーマ、駒澤大・佐藤圭汰選手が履いたOn
第4党は前回大会と同じプーマですが、着用率は8.7%から11.9%にアップ。着用選手のうち城西大の桜井優我選手が9区で区間賞を獲得、3人が区間3位以内に入っています。 プーマのシューズはソールが前後で分割されていたり、つま先が前に出ていたりと、ちょっと奇抜なデザインなのですが、それも速さにこだわっているゆえのデザインなのです。城西大や立教大といったユニフォーム契約をしている大学の選手をアメリカに呼び、採寸も行ない、日本人ランナーの傾向を本社で吸い上げていくという力の入れようでした。こうした努力が、着用率の拡大につながったのだと思っています。 そして第5党に上がってきたのがOnです。着用者数は前回と変わらず全体で3人ですが、7区で区間新記録を出した駒澤大の佐藤圭汰選手が履いたという実績は大きいでしょう。佐藤選手はOnのトップアスリートチームOACの合宿に参加するなど、シューズだけでなく、世界を見据えた練習のサポートも受けていますし、全日本大学駅伝前には開発責任者が故障から練習を再開したばかりの彼や、篠原倖太朗選手の走りをチェックしにわざわざ来日をしていたほどです。 創価大の吉田凌選手が履いていたのが、パリオリンピックでOnがローンチした紐なしシューズ「クラウドブーム ストライクLS」。これはハロウィンなどの飾り付けで使われる蜘蛛の糸風のスプレーから着想を得て開発されたシューズ。縫って貼ってという既存のシューズ制作とは異なり、ソールを装着した足形に糸を吹きつけて成形するというもの。僕も試し履きをさせてもらったのですが、新感覚の履き心地で、しかもこのシューズを履いた選手がオリンピックで躍進し、一気に注目度が高まりました。今後、駅伝界にどのように浸透していくのか楽しみです。
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