オーバーコミュニケーション社会が引き起こす人格崩壊 氾濫する「匿名の言論」
気候崩壊と人格崩壊
人類は都市化する動物であり、不可逆的かつ加速的に都市化する。しかし人類社会には、時に都市化の過剰という現象が見られるものだ。エジプト文明にも、ローマ帝国にも、中国歴代王朝にも、日本の藤原王朝にも、都市化の過剰現象が見られ、社会体制の衰退につながった。 工業生産によって排出される炭酸ガスが地球を覆い、地球を沸騰させ異常気象を招来する。「気候崩壊」だ。同じように、インターネットを利用する情報機器が社会に浸透し、オーバーコミュニケーションの弊害をもたらす。「人格崩壊」だ。前者は、肉体的都市化の過剰であり、後者は頭脳的都市化の過剰である。人類は、外からの文明攻撃ばかりでなく、内からの文明攻撃にもさらされている。 昨今先進国に現れている排他的国家主義の伸長は、単なるグローバリズムに対するものではなく、このオーバーコミュニケーションに対する反動ではないか。彼らに言い訳を与えるわけではないが、プーチンやネタニヤフやトランプや金正恩の行動が示しているのは、コミュニケーションの拒否ではないか。「サル化」による人格崩壊と無関係ではないような気がする。 多くの人も、多くの国も、どうしたらいいのか分からなくなっているように思われる。僕らにできることは、とりあえず、自然を大切にし、孤立を大切にし、アナログを大切にすることだろう。 半世紀以上も前の、ビュルツブルクのユースホステルの一室には、本当のコミュニケーションが成立していたような気がする。あのドイツ人若者二人は、今何を思っているのだろうか。