減り続ける献血可能人口、「足りない血液」を補う人工血液の研究進む
動物用人工血液の研究も
動物医学の関連会社からの問い合わせを契機に、イヌ用人工血液の研究も開始する。ヘモアクトで使用されたのは、人間の血液から作ったヒト血清アルブミン。イヌ用にはイヌ血清アルブミンが必要だが、動物には人間のように輸血用血液をストックする制度がなく、動物病院側は手術のたびに血液の確保に四苦八苦する状態で、アルブミンを作るための血液の確保は困難だった。 小松教授は、イヌの遺伝子の一部を組み込んだ酵母菌から遺伝子組み換えイヌ血清アルブミンの生成に成功する。ヒト用と同じ構造の『ヘモアクト-C』を開発し、昨年10月に発表した。同様の方法で、ネコ用の『ヘモアクト-F』も開発した。
粉末で保存も可能に
ヘモアクトとヘモアクト-CとFは、輸血利用に加え、血液が不足している部位への酸素供給液などといった用途での活用を想定している。どの血液型でも使用できるほか、液体および粉末での保存が可能という、従来にはない利点がある。 保存期間は検証中だが、本物の血液から取り出した赤血球が3週間程度しか保存できないのに対し、少なくとも数カ月はもつという。検証結果次第では、保存期間が大幅にのびる可能性もあり、実用化されればどこの病院にも常備される時代が来るかもしれない。人間用の人工血液に先立ち、動物用は5年後をめどに実用化を図るとしている。 (取材・文:具志堅浩二)