キレる表情がリアルすぎる…安達祐実”祐子”を追い詰める悪人たちの憎めなさとは? ドラマ『3000万』 第4話考察
NHKが新しい制作手法を取り入れ誕生した土曜ドラマ『3000万』。本作は、NHKが新たに立ち上げた脚本開発に特化したチーム“WDRプロジェクト”によって制作され、主演は安達祐実、共演を青木崇高が務める。今回は、第4話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】安達祐実ら、実力派俳優の貴重な未公開写真はこちら。ドラマ 『3000万』劇中カット一覧
金を追う坂本が遂に祐子たちを追い詰める…。
ソラ(森田想)が残りのお金をすべて持ち去った。そのことをきっかけに、祐子(安達祐実)は元の生活に戻ろうとする。一見、穏やかな日常が訪れたように思えたが…。緊張と緩和の第4話。今回、主に「緊張」を担っていたのが坂本(木原勝利)で、「緩和」を担っていたのが奥島(野添義弘)だった。 第4話は坂本がオンラインでアンガーマネジメント講習を受けている場面から始まる。「統率力がない」「仕事で一番大事なのは信頼関係。きっとあなたは誰からも…」とカウンセラーに煽られ、キレそうになるが顔を洗って心を落ち着かせる坂本。だが、机に戻ってきた途端に怒りを抑えられずに暴れ出す。 坂本はソラが関わっていた闇組織の指示役。第2話では、強盗に入られた老人に金庫の番号を教えなければ、少しずつ体を折っていくと丁寧な口調で説明したり、ソラの居場所を見つけられずにいた蒲池(加治将樹)を優しく公衆トイレに連れていき、ボコボコにしたりと一見、温厚だが凶暴性を持った人物として描かれていた。 しかし、闇組織を束ねる木津(栗原英雄)に数々の失態をおかした責任として降格させられると、早くもそのイメージが崩れていく。前回、坂本は蒲池の自宅を訪ねた際に警察の奥島と野崎(愛希れいか)に遭遇してしまったが、おそらく普段の彼ならしないミスなのではないか。
坂本の人間くささが嫌いになれない…。
焦れば焦るほどドツボにはまり、イライラが抑えられなくなっていく坂本。今の彼は何をきっかけにスイッチが入るかわからない地雷のようなもので、長田(萩原護)が「組織のトップってどんな人なんだろう」と疑問を持っただけで「俺じゃ不満か」「俺は上だと思えないってことか?」とキレ始める。頭に血がのぼる、という木原勝利の表現があまりにリアルで長田と一緒に思わず体がビクッとなってしまった。 だけど、坂本は決して理解不能な人物としては描かれていない。彼がアンガーマネジメント講習を受けているのは、木津から怒り過ぎるところを直さなければ、上にはいけないと言われているから。 そんな坂本は、どこか無気力で感情に波がない長田に「羨ましい」と零す。理想の自分になれない苛立ち、部下には裏切られ、上司からはその責任を取らされるという中間管理職の悲哀ものぞかせる坂本はあまりに人間臭くて、嫌いになれない。 しかも、自分の話を否定せず聞いてくれたお礼なのか、長田に「とっとけ」とお金を渡すものだから、ちょっと好きになってしまった。長田もそんな坂本の意外な一面を垣間見て、少し親しみが湧いたよう。長田の車に自動車整備工場から入手した祐子の免許証の控えを見つけ、「僕この人に会いました」と打ち明ける。ついに坂本が祐子とソラのつながりに気づいてしまった。