受け継いでいくべき文化|フェラーリ・プロサングエとともに日本をめぐる4日間の旅
DAY2 金沢~白川郷~飛騨高山~松本
●DAY2 金沢~白川郷~飛騨高山~松本 満潮の千里浜なぎさドライブウェイ、開通を待って走り、こんどは北陸中央道を一気に南下、世界遺産に登録された茅葺の街、白川郷へ入った。 茅葺の家が114軒も残っており、うち60軒は今もなお生活の場として使われている。古き良き日本の原風景といった美しさはもちろん、ユネスコが高く評価したのは現代も残る“結”というこの地域独特の屋根メンテナンスシステムだ。 老若男女がそれぞれの役割を分担しボランティアで互いの家の屋根を葺き治す制度を結という。莫大な時間と労力を伴う葺き替え作業を円滑に行うのみならず、技術の継承という点でも、また経済的な助け合いという点でも優れた制度だ。現在では制度を後世に残すべく一部の家屋のみで実施されている。 時代の変化に合わせながら技術を伝承し、伝統を最善のあり方で残していく。材料である萱ひとつをとっても、また人々の暮らしひとつをとっても、昔と同じではない。一見、昔のまま保存されているように見える村もまた実は、工夫を少しずつ重ねつつ、美しい姿を守っていると言えそうだ。 飛騨高山から乗鞍を抜け信州は松本へ。松本市街に入り、江戸時代の威容を今に伝える国宝松本城を右に見つつ美ヶ原方面へと進む。信州名産のワインとなる葡萄畑の中をさらに山間へと進めば、この日の目的地、天岩戸伝説の残る扉温泉だ。 その昔、神たちも訪れて疲れを癒したという地元の湯治場、扉温泉。2日目の宿となった“明神館”は創業90年以上という一見鄙びた旅館だが、一歩中に入れば和と洋、伝統と最新をほどよく融合させた心地よい空間に誂えられており、疲れた旅人の心を踊らせる。 ルレ・エ・シャトー会員らしく、地元の食材を大いに活かし和のテイストも取り入れたフランス料理のプレゼンテーションもまた伝統と革新の見事な調和であった。
DAY3 松本~蓼科~諏訪~北杜~富士五湖~箱根
●DAY3 松本~蓼科~諏訪~北杜~富士五湖~箱根 3日目。海外からのジャーナリストを迎えてのグランドツアー第2部が始まった。扉温泉からビーナスラインへと山間をのぼり、富士山を遠望するスカイラインを存分に楽しんだ。 山を降り、諏訪大社の上社本宮へ。守屋山に抱えられた由緒ある社で参加者は旅を祈る。 諏訪大社から甲州街道を東進、明治天皇が立ち寄られたという由緒ある旧北原家を訪れた。日本酒“七賢”で有名な山梨銘醸だ。日本酒の生産もまた、伝統を守りながら時代の好みに合わせて改良を続けるという挑戦の物造りだろう。欧州からのジャーナリストたちが特に興味を示す。彼らの経営になる発酵料理レストラン“䑓眠”でランチをとり、山々の向こうに一際高くその姿を見せる富士山を目指して富士五湖へとノーズを向けた。 河口湖から西湖へ。それまで厚い雲の奥に隠れていた富士山がいきなり姿を現す。これには中国や韓国からのジャーナリストが歓喜した。冠雪のない夏の富士もまた雄大で、悠久の姿にしばらく見惚れたのち、この日の宿のある箱根を目指した。 俵石閣。仙石原開発の要となった建造物である。100年余り前に建てられた数寄屋造の屋敷で、上皇陛下ゆかりの場所だ。今ではリゾートホテル“箱根リトリート”の料亭“俵石”として活用されている。自然と伝統、そしてモダンが広大な敷地内において緩やかに連携するそのコンセプトもまた、時代を超えて歴史と文化を受け継ぐための知恵というものだろう。