超希少疾患と診断されたわが子 孤独と不安を乗り越えるため自ら患者会を作った母親の思い
大阪母子医療センターの岡本医師や遺伝カウンセラーの西村さんは、過去にセンターを受診したHNRNP関連疾患の患者や家族を調べ、一人一人に歌織さんが患者会を立ち上げようとしている現状を伝えた。「興味がありますか」「情報を求めていますか」と声を掛け、実際に患者会に入った人もいた。 西村さんは「歌織さんは海外で活動する団体のことを教えてくれて『日本にないんであれば、私が作ろう』って。すごく強い熱意を感じた」と振り返る。バイン症候群だけでは患者数が極めて限られる。2023年7月、バイン症候群以外のタイプのHNRNP関連疾患の患者や家族も含めた「HNRNP疾患患者家族会」として正式にスタートした。 ▽待望の臨床試験 活動の幅は広がっていく。同じ7月には、西村さんと共に、長野県で開かれた日本遺伝カウンセリング学会の学術集会に参加。自らブースを出して、病気について伝えるチラシを配った。 8月には米国のフロリダに家族で向かい、米国の患者会の集まりに参加した。患者会メンバーだけでなく、バイン症候群を見つけた医師や治療法を探る研究者とも話をした。研究に役立てるため、米国患者会と研究者が進めている研究に、希ちゃんや家族のデータを登録した。
その直後の年末年始には、嬉しいニュースが飛び込んできた。バイン症候群の治療薬の臨床試験が始まるという知らせだ。オンラインで医師からYBRPのメンバー向けに説明と質疑応答の機会が設けられ、まずは米国に住む7歳の女の子が投与の対象になると明らかになった。臨床試験の情報は自身の患者会を通じて国内に紹介した。 歌織さんは「日本国内で研究が進んでいる病気なら良いが、そうでない場合は情報が非常に限られる。海外とつながりを作るのは必須だ」と語る。「臨床試験の話はまだ決まっていない部分もあるけれど、透明性高く情報を伝えていくのが大事だなと思う」と話す。 現在、会に参加するメンバーは9人。これまでは3カ月に1回程度の頻度でオンラインで交流してきたが、今年6月には対面で会う予定だ。 ▽つながり作りを支援する 「同じ病気の人と連絡を取りたい」。希少疾患の患者や家族に共通する願いであり、悩みだ。難病や希少疾患の患者会でつくる「日本難病・疾病団体協議会」(東京)で患者の支援に関わる日吉こずえさんは「同じ病気の方とつながるため、患者会を立ち上げたいという相談は多い」と話す。