超希少疾患と診断されたわが子 孤独と不安を乗り越えるため自ら患者会を作った母親の思い
▽疑いから検査へ 北丘聖愛園の新山妙子園長は「入園当初は座れなかったが、いまはイスなしでも座れるし、膝立ちもできる。手洗いも支えてもらいながらできる。言葉は話せないが、好きな子や自分のことを分かってくれる子、『あれどう?』『これどう?』と聞いてくれる子には頼っている」と園での様子を語る。 希ちゃんは、2020年1月に生まれた。母親の歌織さん(42)によると、妊娠中や出産時、医師から指摘されるような問題はなかったという。気になる点が見つかったのは生後4カ月健診。首が据わらず、姿勢を安定させるための筋肉の緊張が弱く、股関節を脱臼している疑いがあった。 豊中市内の総合病院を紹介され、血液検査や脳のMRIといったさまざまな検査をした。筋力低下を引き起こす難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」に関わる遺伝子も調べたが、いずれも異常は見つからず、経過観察とリハビリを始めることになった。 体重は少しずつ増えていったが、リハビリを続けても症状が改善しない。歌織さんがインターネットで「発達の遅れ」などの言葉で調べてみると発達障害や脳性まひの情報やコミュニティはあったが、希ちゃんはどれにも当てはまらなかった。
別の総合病院では眼科医に斜視を診てもらった。「だいぶ小さい頃からこうだった?」と医師。歌織さんは「発達の遅れと関係ありますか?」と聞くと、医師からは「一度、小児の専門病院を紹介してもらってはどうか」という答えが返ってきた。 その後、歌織さんは、通っていた児童発達支援センターの医師にそれまで怖くて聞けていなかった質問をした。「発達がゆっくりなのは良いのですが、他の子どもにはいつ追いつきますか。通常の学校に通えますか」。返答は「それは難しいでしょう」だった。 ▽診断はついた。だが情報は少なく … 専門の医療機関に行かないと先には進めない。紹介を頼んでたどり着いたのが大阪母子医療センターだった。このセンターは、原因不明の病気に悩む子どもの遺伝子を網羅的に調べて原因を探る「IRUD」という国のプロジェクトの拠点の一つだった。希ちゃんも、このプロジェクトに参加し、遺伝子を解析した。 22年10月、解析の結果、バイン症候群だと告げられた。担当の岡本医師から、16年に初めてこの病気を報告した英語の論文と、日本語で解説した資料を手渡され、認定遺伝カウンセラーの西村夕美子さんが時間をかけて説明してくれたが、情報は限られていた。日本に何人の患者がいるかも分からない。