超希少疾患と診断されたわが子 孤独と不安を乗り越えるため自ら患者会を作った母親の思い
製薬企業に勤める歌織さんは医学論文に触れる機会が多く、もらった論文を読み、さらに他の論文も探した。そこで「8割ぐらいの患者は言葉を話せていない」という記述を見つけた。診断が付いたのは救いだったが、ショックは大きかった。 診断から1週間ほどたち、論文の中に「Yellow Brick Road Project(YBRP)」という団体の名前を見つけた。米国で活動するバイン症候群の患者や家族で作る団体だった。 インスタグラムやホームページから連絡先を見つけて、代表の女性にメールを送信。フェイスブックに関係者のグループが作られており、歌織さんはそこに加わった。「日本人は初めてですよ」と歓迎されたという。 「言語聴覚療法はやったほうが良いの?」と聞くと、同じバイン症候群の患者の家族から「絶対やった方が良い」「将来的に話せなくても、タブレットとかでコミュニケーションをする基盤になる」という答えが返ってきた。論文には載らない、知りたかった情報がそこにはあった。感動し、孤独感も薄れていった。 ▽日本の患者会、立ち上げへ
一方で歌織さんはある疑問を持った。「日本からこの情報にたどり着ける人がどれほどいるんだろう」。日本でYBRPにつながっているのが1人だけなら、自分が発信するしかない。そう決断して、2022年11月からインスタグラムで情報発信を始めた。 「今後、日本で診断される子もいるかと思い、日本語で情報とのんちゃんの成長と日々の暮らしを発信します」。そうした文章と共に始まったインスタグラムでは、バイン症候群の症状、検査、治療法を説明。さらに希ちゃんの成長の様子、希ちゃんが受けた音楽療法や作業療法について投稿していった。 ただフォロワーはあまり増えず「さて、どうしようか」と考えた。他の病気の患者団体の人と話したり、希少疾患の患者や家族が集まるイベントに参加したりするうちに「患者会を作らなきゃ」と思い立った。フェイスブックに専用のページを作成し、2023年2月に「HNRNPH2患者会準備室」を立ち上げた。インスタグラムでは「個人よりも患者会の形をとった方が、医療関係者や行政などいろいろアクセスしやすい」と理由をつづっている。