2500万円超え「レンジローバー」を山道でゴリゴリに転がしてみた結果
● 山道でエンジン+モーターを試してみたが、 静かすぎて驚くほど 30kmほど一般道を走り、いよいよ山道に入る。まだバッテリーの残量は十分残っているが、エンジン+モーターが絞り出すハイパワーの世界も楽しみたい。モードを変えてエンジンを回そう。フロントに積まれるエンジンは水冷直列6気筒ターボチャージャー付きの2993ccガソリン仕様。最高出力はエンジン単体で400馬力。そこに160kW、約218馬力のモーターが組み合わさり、システム出力は550馬力になる(ハイブリッド車の馬力は、エンジン+モーターの出力が単純な足し算にならないのだ)。 荒れたアスファルトのタイトなワインディングが続く。アクセルを強く踏み込む。夢のような加速。しかしロードノイズも、エンジンのうなり声も聞こえてこない。遮音性が高いのはもちろんだが、それだけでこの静寂さは実現できない。 静かさの秘密は、次世代型のアクティブノイズキャンセレーションにある。不要なノイズをマイクで拾って逆位相の音を作り出し、ノイズを打ち消しているのだ。逆位相の音を出すスピーカーはヘッドレストに埋め込まれている。しかも運転席だけでなく、助手席にも後部座席にも。徹底した騒音対策が施されているのだ。
● 「運転がうまくなった?」といい気分になる アダプティブダイナミクス 重いバッテリーを積み、3トンに迫る重量級の車体は、どっしり安定してコーナーをクリアしていく。結構な速度なのだが、不安は一切ない。高い剛性のプラットフォームと、強靭な足回りが実現する走りだが、こちらやはりそれだけではない。巌(いわお)の安定性を実現させているのは、アダプティブダイナミクスだ。ボディの挙動とステアリングの動きを1秒間に最大500回もモニターし、それを連続可変ダンパーとブレーキにフィードバックし、ドライバーの操作と路面状況に応じて走りを調整している。この効果は絶大で、「なにか運転がうまくなった」といい気分にさせてくれる。実際は1ミリもうまくなっていないのだから、帰りに自分のクルマに乗り換えた時は注意しなければいけない。それにしても速い。だが荒々しく速いのではなく、穏やかに速い。超高級SUVの面目躍如である。 驚いたのは、狭い駐車場でUターンした時だ。 全長5メートル超。ホイールベースは3メートルに迫ろうという大きく長いクルマが、小さい半径でクルッと向きを変えるのだ。後輪にも一定の操舵機能を持たせた、オールホイールステアリングである。Uターン時のような低速時の俊敏性はもちろん、高速走行時にはより優れた安定性を両立させている。大昔の4輪操舵は違和感満載の妙な乗り心地で、クルマ酔いをしたものだが、レンジローバーの最新版はごく自然で、違和感を一切覚えない。技術の進化には目を見張るばかりである。