2500万円超え「レンジローバー」を山道でゴリゴリに転がしてみた結果
と、こんな背景があり、JLRJ(ジャガー・ランドローバー・ジャパン)主催のPHEVの試乗会に出かけてきた。会場は、千葉県木更津市のKURKKU FIELDS(クルックフィールズhttps://kurkkufields.jp/)。音楽プロデューサーの小林武史氏が手がけた、30ヘクタールもの広大な敷地で、農業と食とアートの三つのコンテンツを楽しめるオーガニックファームである。 電力は全て自前の太陽光発電でまかない、排水はバイオジオフィルターで浄化され、ゴミや生き物の排せつ物は堆肥として利用するという徹底ぶり。完全なる循環型の施設である。2039年までにネットゼロカーボンを目指し、企業戦略の中核に電動化を据えるJLRのクルマの試乗会場としていかにもふさわしいではないか。 風光明媚なクルックフィールズは実に“絵になる施設”である。緑豊かな山林に囲まれ、山の向こうには東京湾が望める。クルマの写真を撮るにはうってつけだ。試乗会の開催を希望するメーカーは多い。しかし施設のスタッフに尋ねると、今までそれらのオファーは全て断ってきたのだと言う。今回JLRのPHEV試乗会が自動車業界で初めて許されたのは、同社の企業理念に賛同してのことだろう。
● 2024年は ランドローバーにとって「電動化元年」 先に述べたように、JLR(ジャガー・ランドローバー)は2039年までに企業としてネットゼロカーボンを目指している。 その足がかりとして、今年はレンジローバーの全モデルにPHEVを展開する。来年からは、よりアウトドア志向の強いディフェンダーにもPHEVを導入し、レンジローバーのフルEVモデルも発売する。ジャガーに至っては、全ての車種がEVになる。なんとあの名門・ジャガーが、来年からエンジンを捨てEV専業メーカーになるのだ! そして30年にはランドローバーのすべてのモデルで、フルEVのモデルを提供する。何ともすさまじい電動化シフトではないか。今年は、言わば「ランドローバーの電動化元年」とも呼べる年なのだ。 当日用意された試乗車は、すべてPHEVモデルである。時間が限られているので、全ての車種を片っぱしから試すわけにはいかない。そこで今回は、日本に輸入されて間もないという「RANGE ROVER Autobiography P550e」をリポートしよう。 ● 「RANGE ROVER Autobiography P550e」 に乗ってみた! 車内に乗り込むとプンと芳しく漂う、上質ななめし革の香り。 シートに腰掛ける。柔らかく体を包み込む上等なシート。スタートボタンを押す。無音。アクセルを踏み込むと、全長×全幅×全高:5005mm×2005mm×1870mmの巨体は、モーター“だけ”の力で文字通り音もなく、しずしずと走り出す。 ゆるい登り坂を上がる。218馬力のモーターだけでこれほど力強く走れるものなのか、と嘆息する。このモーターを駆動するバッテリーサイズは38.2kWh。フル充電の状態であれば、120kmもEV状態で走ることができる(現実的な使用状況での想定値は94kmとされているが、それでも結構な距離だろう)。このバッテリーは急速充電器を使えば60分で80%充電が、7kwの普通充電器を使えば5時間で満充電が可能である。多くの既存RANGE ROVERオーナーがそうであるように、街乗りオンリーであれば、エンジンの出番はほとんどないのではないか。