LAの美術館が略奪文化財20点を「自発的かつ倫理的」にオーストラリアの先住民族に返還
カリフォルニア大学ロサンゼルス校内にあるファウラー美術館は、オーストラリアのノーザンテリトリー州に住む先住民族ワルムングに20点の「重要文化財」を返還したと7月24日に発表した。 正式な引渡式は、大学関係者とワルムングの長老2名、そして文化遺産の引渡しを専門とする政府機関「Australian Institute of Aboriginal and Torres Strait Islander Studies」(AIATSIS)の代表者らによって執り行われた。長老の一人であるジョーンズ・ジャンピジンパは、次のようにコメントしている。 「ワルムングの人々にとって、こうした遺物が戻ってくることは非常に重要なことです。ファウラー美術館に収蔵されていた工芸品の多くは、私たちが生まれる前から存在していたのに、私たちはそれを目にすることができなかったのですから」 ファウラー美術館はアフリカ、アジア、太平洋、アメリカ大陸先住民の美術品を中心に展示する施設で、今回の返還は「自発的かつ倫理的」なものだと主張している。 AIATSISは、世界中の博物館の収蔵品から先住民族の重要文化財を専門に調査する取組、「Return of Cultural Heritage(RoCH)」を2018年に設立しており、6年の間に少なくとも200の機関がRoCHから連絡を受け、所蔵している文化財の調査の依頼をしている。こうしたなかファウラー美術館は、美術品や工芸品の返還について前向きな態度をRoCHに見せた施設だった。 RoCHの申し入れを同館が受け入れたのちにAIATSISに所属する2人が美術館を訪れ、ワルムングの品々の真正性を確認している。そのうちの半分は、1965年にロンドンの医療研究財団「ウェルカム・トラスト」から博物館に寄贈されたものだ。ファウラーは、この財団を通じて、約3万点の美術品を過去に受け取っている。 ファウラー美術館は、美術品の返還を積極的に近年行っており、西アフリカのアシャンティ王国から略奪された7点の遺物を、現在のガーナ・クマシにあるマンヒヤ・パレス・ミュージアムに2024年2月に返還したという。 今回の返還は、ウェルカム・トラストからの寄贈品を中心に、アフリカの遺物約7000点を調査するために、アンドリュー・W・メロン財団から総額60万ドル(約9200万円)の助成金を2019年に受け取ったことで実現した。その結果、美術館の研究者たちは、第3次アングロ・アシャンティ戦争中にアサンテ王国から7つの品物が盗まれたことを突き止めた。ファウラー美術館館長を務めるシルヴィア・フォルニは次のように語る。 「ファウラー美術館は、一時的に収蔵品を管理する役割をもつ機関だと考えています。力ずくで強制的に本来の所有者や地域社会から作品が持ち去られた場合、それらを返すためにできることをするのが私たちの倫理的責任なのです。これは、何世代にもわたって当館のスタッフが取り組むことになるかもしれませんが、私たちは強い責任感をもってそれを達成できるよう努めて参ります」(翻訳:編集部)
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