“首位”矢野監督の余裕と“最下位”三浦監督の苦悩…阪神「代走連続3人」采配が横浜DeNAに与えた衝撃とは?
三浦監督が「8回の男」に選んだのは、左腕のエスコバーだった。 本来ならば、ここは山崎である。だが、前日のゲームで一死しか取れず4安打3失点と炎上。途中降板を余儀なくされたセットアッパーは使えない。 ブルペンに残っていた代役候補は、右腕では平田、伊勢、シャッケルフォード、左腕ではエスコバー、櫻井。苦しい台所事情でベンチの選択は間違っていなかっただろう。しかし、エスコバーは、いつもの勢いに欠け、加えて記録に残らないミスが重なった。そして、そのミスを誘いこんだのは、異例の「代走3人」という矢野監督の勝負手の二の矢だった。 8回先頭の糸原に逆方向の二塁打を許す。阪神ベンチは1人目の代走の植田。続くサンズに対しての配球にミスが生まれた。エスコバーは2-2と追い込んでから外角低めへストレートを投じた。そここそが、サンズの得意ゾーンだった。この打席、空振りを取ったのは、内角のスライダー。打撃が窮屈になるインサイドで勝負すべきだったのだ。 無死一、三塁となって矢野監督は、サンズに2人目の代走の熊谷を送る。結果的に、この代走が勝負を分けることになる。大山にカウント2-1からランエンドヒットを仕掛けられた。守備固めに入っていた二塁手の柴田が、熊谷のスタートに合わせて動き、大山が叩きつけた打球に対する守りのタイミングが、一瞬、ズレた。併殺に、おあつらえむきのセカンドベース上のゴロにバウンドを合わせきれなかった柴田は、打球をスルー。これが同点タイムリーとなり、さらにピンチが広がる。記録はヒットだったが、阪神ベンチの“代走攻撃”に揺さぶられて生まれたミスだった。大山にも3人目の代走の島田。盗塁を許し、一塁が空いたところで佐藤には四球。満塁となって打席にロハスを迎えた。 キャッチャーの伊藤は、ストレートを2球続けて要求し、連続で空振りさせた。球速は146キロ、152キロ。本来のエスコバーの球威ではなかった。 だが、余裕のあるカウントで伊藤は、さらにストレートを3球続けた。154キロ、150キロ、156キロと、ムラのあるストレートは、いずれもファウルにされた。ストレート狙いのロハスのタイミングがバットを振りながら合いつつあった。結果論ではなくスライダーを使っておくべきだった。まだ日本野球に慣れていない外国人相手に「裏の裏」をかく配球は通用しない。