“首位”矢野監督の余裕と“最下位”三浦監督の苦悩…阪神「代走連続3人」采配が横浜DeNAに与えた衝撃とは?
6球目に、ようやく伊藤はインサイドに体を寄せてスライダーのサインを出した。だが、ボールを置きにいくように腕のゆるんだスライダーが、ロハスの足元を直撃した。痛恨の押し出し死球。勝ち越し点を与えると続く中野にも犠飛を打たれ2点差をつけられた。 足でかき回されて満塁にされたことがボディブローのように効いていた。 「先頭に長打を打たれた後がエスコバーらしくなかった。ボールスピード(表示は)出ていたが、(調子は)もうひとつ。毎回、毎回、抑えられるわけではないが悪い方が出てしまった」 三浦監督は、試合後、そう振り返った。 8回は続投した伊藤に3者凡退に抑えられた。一死から伊藤裕、細川の代打カードを切ったが、初見で幻惑投法の伊藤を攻略するのは難しい。 結局、回り回って矢野監督の「動かない」勝負手が吉と出た。対して横浜DeNAは、9回にマウンドに送った櫻井も佐藤にダメ押しタイムリーを打たれ、ストッパーの三嶋を温存したまま、後半戦3連敗となった。 15日のヤクルト戦は先手を取ったがリードを守れず、17日の阪神戦は追いついたが突き放された。いずれの試合も打ち負けている。「(打線に)もう1本出ないときは、ピッチャーがカバーして踏ん張らないといけない」(三浦監督)のだが、東京五輪帰りの山崎が調子を取り戻せないでいると、たちまち「8回の男不在」という問題を抱えることになる。ロッテへトレードに出した中継ぎの国吉が2試合続けて好救援をしているのは皮肉だ。 試合前に三浦監督は、こんな話をしていた。 「打撃コーチもいろいろと考えてくれている。やはりどの投手もそうだが、先に点を取らないと。理想は先制中押しダメ押し。投手も打者も腹をくくって打席でもマウンドでも攻めていかないとね。攻める気持ちは、みんな持っているが、打ちたい気持ち、抑えたい気持ちが強すぎてね。結果が出ていないから、そう(攻めていないように)見られるが、選手は今日こそはと取り組んでくれている。攻めていけるように、みんなで同じ方向を向いてやっていくしかない」 気持ちが空回りし、投打の歯車が噛み合っていないが、やはりベイスターズの野球は「攻める野球」からリズムをつかまねばならない。今日の阪神先発は藤浪。はまれば手が出せないが、投げてみなければわからない不安定さも同居する虎の開幕投手である。 「早く後半戦の白星をね。全員で明日やっていくしかない」 “番長”はそう前を向いた。