『ミシュランガイド』がラーメンを認めた理由と、一つ星4名店の極上なる味わい
5年連続星獲得の名店/東京・新宿『SOBAHOUSE 金色不如帰』
さらに翌2018年には、東京・幡ヶ谷(現在は新宿に移転)の『SOBAHOUSE 金色不如帰(こんじきほととぎす)』が一つ星を獲得する。その後、22年まで5年連続で掲載を果たした実力店だ。 『金色不如帰』はうまみの重ね方に定評がある。「そば(醤油)」は、鴨(かも)をベースに丸鶏と牛肉で仕上げた動物系スープ、蛤(はまぐり)スープ、和風だしの3種類を合わせたトリプルスープで仕上げていく。芳醇(ほうじゅん)な香りの黒トリュフソースと赤ワインのマリネをレンゲの上でゆっくりと溶かしながら食べれば、また違う味わいを二度楽しめる。 そんな『金色不如帰』は24年5月、全メニューの味を一新。リニューアル前に比べて、うまみの強さ、うまみの構成、脂感、香りの広がりをさらに突き詰めた。星付きの称号を得た今もなお、常に味の改良に余念がない。
タレを使わない「非常識な」一杯/東京・東銀座『銀座 八五』
最新の星付きラーメン店は2021年に一つ星を獲得した東京・東銀座の『銀座 八五(はちご)』だ。フレンチの世界で40年にわたって腕をふるってきた松村靖氏が手がけるラーメンは、伝統的なラーメンの製法に一石を投じた「非常識な一杯」として知られる。従来のラーメン界にはなかった斬新な発想を持ち込み、後に続く多くのラーメン職人に影響を与えた。 ラーメンは通常、「カエシ」と呼ばれるタレで味を決めるが、『八五』はタレを一切使わず、フレンチの技法を用いたブイヨンだけのスープを用いるのが特徴だ。そこに名古屋コーチンと鴨をベースに干し椎茸(しいたけ)やドライトマトなどの野菜類を加え、プロシュートで風味と塩味をつける。分厚い黄金スープは、芳醇な香りで口当たりまろやか。素材のうまみが五臓六腑(ろっぷ)に染み渡る。 『ミシュランガイド』で星を獲得したのは、ここまで紹介してきた4つのラーメン店だけだ。そのすべてが東京に集中しており、それ以外の都市ではビブグルマンはあっても、星の獲得はまだない。 『ミシュランガイド2024』においてビブグルマンだけを見れば、東京版が19店、関西版が17店と、東西の掲載店数はジワジワと近づいている。筆者の感覚としても、ビブグルマンに8年連続選出されている京都・修学院の『らぁ麺 とうひち』や行列の絶えない大阪・中津の『麦と麺助』など、星を獲得しても不思議のない実力店がいくつも存在している。 24年10月22日に発売される『ミシュランガイド東京2025』で、東京で五つ目の星付きラーメンが誕生するのか、はたまた東京以外のエリアで初の星付きラーメンが誕生するのか。果たして結果はいかに。
【Profile】
山川 大介 YAMAKAWA Daisuke 立命館大学卒業後、飲食メディアでラーメン店の取材に注力。その後広告代理店勤務を経て、2023年に日本初となるラーメンの麺を使ったクラフトビール『華麺舞踏会』を開発。現在は株式会社Beer the Firstの取締役に就任し、企業や全国の自治体との商品開発、SNSを使った集客支援、執筆活動など多岐にわたり活動中。