【行正り香さんにきく〝50代。これからの住まい〟に思うこと〟①】人生の後半戦、納得のいく家づくりの第一歩は、自分の「好き」を見つめ直すこと
◆自分が好きだと思う、真似したい空間のビジュアルを探す
とはいえ、「住まいを心地よくする」といっても、「では何をしたらいいの?」と思ってしまう。 「まずは、自分が好きな空間のお手本となるビジュアルを探すこと(インテリアの実例、建物の施行事例などの実例を見つけること。雑誌や写真集、映画のシーンから探します)から始めていきましょう。 お子さんが巣立って夫婦二人だけの暮らしになるとするなら、夫婦で納得がいくビジュアルを見つけることが大切です。 私がインテリアのお仕事を通じて、いろいろなご夫婦を見て思ったのは、理想がわからないまま動き出してしまうと途中でもめてしまうということ。 妻が『こうしたい』ということを夫は『やりたくない』など、もめにもめて大変なことになるのです。夫婦って、お互いのことをわかっているようでわかっていない部分がありますよね。妻が『私はこんな部屋に住みたい』というのをどんなに言葉で表しても、結局うまく伝わっていなかったということも多くあります。 例えば『シックなテイストにしたい』と妻が言い、夫も『シック、いいね』と賛成したとします。ところが妻が思い描いている『シックなテイスト』と、夫が『シック』ときいて頭に浮かべるイメージに大きな隔たりがある場合、もめるのです。 だからこそ、言葉だけに頼らないで、目で見てわかるビジュアルを提示し、どんな空間、どんなインテリアを目指したいのかを共有していくことが大切なんです。 逆にいうと、住まいの理想を見つけるためには、ぜひたくさん〝けんか〟をしていいのです。 ここでいう〝けんか〟とは、『僕はアマンのスタイルが好き』『えー、私はむしろ帝国ホテルみたいなのが好きだわ、例えばこのお宅はどう?』『うーん…だったらこういうパーク ハイアットの感じの家はどう?』など、二人が納得のいくものを見つけるためのディスカッションのこと。 言葉だけではうまく伝わらなかったことも、ビジュアルを見せ合いながらディスカッションすることで、『私が言っていた〝シック〟っていうのはこういう感じなの』『なるほど』とわかり合うことができます。 二人が納得できるところまで、根気よくあれこれ探していくことが大切です」