【行正り香さんにきく〝50代。これからの住まい〟に思うこと〟①】人生の後半戦、納得のいく家づくりの第一歩は、自分の「好き」を見つめ直すこと
◆自分ができることや予算を考え、リノベの仕方や個性の出し方を考える
「予算に余裕があって、インテリアコーディネーターさんや建築家さんといったプロに依頼する場合も、やはり理想の住まいのビジュアルを自分たちであらかじめ見つけておくことは大切です。 なぜかというと、プロに理想のテイストから探すことを頼むのは可能ですが、そうなると相手はいろいろなバリエーションを提案しようと頑張り、バリエーションが増えるたびにどんどんコストがかかってしまうからです。 インテリアコーディネーターや建築家さんにはそれぞれのスタイルがあり、依頼主はたいがいそのインテリアコーディネーターや建築家のスタイルが好きだから依頼します。だから実現したいそもそもの理想(テイスト)がわかっていないと、どのインテリアコーディネーターや建築家に依頼すべきなのかすら、わからなくなるのです。 ゴールとなるビジュアルを見つけたら、それに近いものを提案しているプロは誰なのかを探すのです。逆に言えば、その誰かを探すには『自分の好き(理想)』がわからないと前に進めないということ。 例えば、私がインテリアのお仕事を受ける場合、私が現在所有している下記の3つの物件から好みのタイプを選んでもらいます。 ・自宅のような『モダン×北欧』 ・スタジオのような『クラシカル×北欧』 ・京都の家の『日本×北欧』 インテリアは、壁の色ひとつ、フローリングの床板の幅ひとつとっても、選択肢がたくさん。決めることが山ほどあります」
♦家づくりに必要なのはお金(予算)だけではない。気力と体力も必要
例えばドアの把手を選ぶという場合。 「把手ひとつにもものすごい種類があって、その中から選ぶのは結構大変なのです。 私の場合は『真鍮の把手にしたい』と思ったので、家全体でテイストを統一していますが、どれも選びに選び抜いたものを使っています」
上から、キッチンにある食器棚の把手、リビングの引き戸の把手、リビングのチェストの把手。すべて自分で探し、つけ替えたもの。 「こうしてこだわればこだわるほど自分で探し求め、集めた情報の中から自分で選び取っていくことが増えていきます。 先ほどのお話と重複しますが、心地よいすまいをつくり上げていくには、どれだけ予算がかけられるか、だけではなく、どれだけ自分で選ぶ手間をかけられるか(気力、体力があるか)ということも考えないといけません。 ですから『老後になってから考えればいいや』と定年を迎えてから考え始めるよりも、体力も気力もある50代のうちから考えて行動するほうがおすすめです。そもそも理想のビジュアル探しだって、探し始めてすぐ見つかるとは限りません。 日頃から素敵なものやいいものを見る習慣をつけて、自分の『好き』が何かを考えてみてください。それが理想を見つける一番の方法です」 次回も心地よいすまいづくりのヒントをお話ししていただく。お楽しみに!