約9割の子どもが中学校までに「いじめの加害・被害」のどちらか、または両方を経験。「いじめが起こりにくい環境」を作るために大人ができることとは
◆いじめが起こりやすい年齢と、いじめの内容 犬山 いじめが起こりやすい子どもの年齢はあるのでしょうか。そして年齢によっていじめの内容にはどんな変化があるのでしょうか。 また、どんな環境だといじめが起こりにくくなるのかも知っておきたいです。 荻上 小学校の中高学年ぐらいを1つのピークとしていじめが存在します。先生側の認知件数だと、中学校1、2年生がピークになりますが、体験の報告調査ですと、もう少し下の学年がピークとなります。 また、中学生のほうがやや長期化しやすい傾向があります。いずれにしても、小学生から中学生の間はいじめ対策を強化することが必要かと思います。 日本では暴力系のいじめより言語系・関係系のいじめのシェア率が高いのですが、それでも小学校のときには、暴力系のいじめが一定の割合を占めます。 それが、中学校になると減少します。その代わりに陰口とかあだ名とか、ネットを使ったいじめの割合が増える。中学生になるとスマホを手に入れるので、そうしたいじめを経験する機会が増えるということですね。 どの年齢でも、メディア経由や友人経由などで入手した語彙で、他者を攻撃するということはありますが、そのレパートリーには、性差別や人種差別なども含まれます。一般的には中学2年生をピークにいじめは減少するはずなのですが、たとえば性的マイノリティの人へのいじめは中学3年生にピークを迎えるというデータもあります。
◆スーパービジョン 荻上 また、いじめが起きやすい環境についてですが、前提として、いじめの96%は大人のいないところで発生します。したがって、子どもから大人に報告してもらう仕組みが必要です。 大人がいじめを見つけるために、いじめ防止アクションとして、通学路や下校時に保護者が道に立って見守るといった活動が行われています。これは、大人による発見を増やそうとするアクションでもあります。これらの行為はまったくの無駄というわけではなく、一定の効果があります。 こうした行為を「スーパービジョン」と呼びます。簡単に言えば「しっかり見る」「しっかり見守る」という意味です。日本の場合、休み時間の教室でのスーパービジョンも必要で、大人の目が常にある状態をどう作り出すかが課題です。 また、その大人の目を監視ではなく見守りと感じてもらうためにはどうすればいいか、その信頼感を築くことが前提となります。 犬山 いじめが起きる環境を改善というと、そんなことでいじめがなくなるのか、と思ってしまうけれど、チキさんの著書『いじめを生む教室』にもある通り「いじめが増える環境にするにはどうすればいいか?」という発想だと、「子どもにストレスを与える先生を増やす」「自由な時間を与えない」などたくさん出てくるわけです。だから逆に、いじめが起こりにくい環境作りだってできるんですよね。 ※本稿は、『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
犬山紙子
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