約9割の子どもが中学校までに「いじめの加害・被害」のどちらか、または両方を経験。「いじめが起こりにくい環境」を作るために大人ができることとは
母娘関係やSNSとの付き合い方、いじめ、ダイエット…女の子を育てるとき、どのように接するべきか、迷う場面も多いのではないでしょうか。5歳の女の子を育てるエッセイストの犬山紙子さんは「娘を女性であることの痛みからどうにか守りたい」と強く考えたそう。そこで今回は、犬山さんが女の子を育てるときの“どうしよう”を専門家と考えた著書『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』から、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事であり、いじめを受けた当事者でもある荻上チキさんとの対談を一部お届けします。 【書影】女の子を育てるうえで大切にしたいことを、専門家と考える。犬山紙子『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』 * * * * * * * ◆いじめの前提知識 ハイリスクな子どもはいる 犬山 いじめの被害はもちろん、加害も当然してほしくないと思っています。また、いじめには男女差はあるのでしょうか。 荻上 国立教育政策研究所の調査では、小学校から中学校の間に、8~9割の児童・生徒が、いじめをする側にも、される側にも回ります。 ここでいう「いじめ」とは、殴る、陰口を言う、仲間はずれをするといった、個別の行為の集積を指します。それが持続的なのかどうかは差し置いて、一定の期間内に学校のメンバーなどからされた経験を含んでいます。相当広い定義ですが、加害・被害はどちらも、誰もが経験しうるということになります。 学校に入学させるとき、「自分の子どもがいじめられたらどうしよう」と心配する人は多いと思います。実は同程度に、「自分の子どもがいじめをしたらどうしよう」という予測や準備も必要となるのです。
◆基礎的な状況に着目する 荻上 いじめの加害・被害は、学校生活の中でどんどん入れ替わりますが、いじめにおいてはハイリスクな層がいます。たとえば、吃音などの障がいを持っている児童や、性的マイノリティの児童などは、他の児童と比べてリスクが高いです。だから、誰もがリスクがあるけれども、そのリスクは一律ではなく、ハイリスクな人が一定数いるということです。 いじめ経験については、男女差も存在します。身体的な暴力は男性が多いです。女性は、うわさ話や性的なからかいの被害が多くなります。 ただ、この差に大きく着目しすぎることは全体をゆがめてしまう恐れがあります。というのは、ある程度の差はあったとしても、いじめのパターンは似通っているためです。 ですので、基礎的ないじめ状況について着目し、いじめが起きやすい環境を改善していくことが大前提です。
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