なぜ男子100mで波乱が起きたのか…初V多田と3位山縣が内定…2位デーデー、敗れた桐生とサニブラウンの五輪出場はどうなる?
日本選手権の男子100m決勝(25日/大阪・ヤンマースタジアム長居)は緊張感みなぎるレースになった。五輪参加標準記録(10秒05)を5人が突破していたが、各国代表枠は最大3枠。2人は100mで東京五輪に出場できない。究極のイス取りゲーム。TOKYO2020への最終トライアルは意外な結末が待っていた。 シャープな飛び出しを見せた多田修平(住友電工)が10秒15(+0.2)で初優勝をさらうと、デーデー・ブルーノ(東海大)が10秒19で2位に入った。日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)は大学の後輩・小池祐貴(住友電工)に0.001秒差で競り勝ち、3位(10秒27)を確保。桐生祥秀(日本生命)は5位(10秒28)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)は6位(10秒29)に終わった。 五輪参加標準記録突破者で「3位以内」に入った多田と山縣が東京五輪代表に内定した。3枠目は五輪参加標準記録突破者のなかで日本選手権最上位になった小池が7月2日以降の「第2次内定選手発表」で選出される見込み。同学年の小池と桐生は0.01秒差が命運をわけたことになる。 内定辞退者が出ない限り、桐生とサニブラウンは100mでの東京五輪は絶望となった。2位に食い込んだデーデーもワールドランキングのターゲットナンバー(56枠)に入っていないため、個人種目の代表を獲得することはできない。 大激戦だったとはいえ9秒台を持つ桐生とサニブラウンはなぜ日本代表に届かなかったのか。
多田が貫いた先行逃げ切りの勝ちパターン
まず今大会は多田の走りが非常に素晴らしかった。10秒01をマークした布勢スプリント(6月6日/鳥取・ヤマタスポーツパーク陸上競技場)以降、持ち味である「スタートから中盤」の走りがさらに研ぎ澄まされてきて、「日本選手権で優勝を目指せる」という自信が沸いてきたという。 多田の勝ちパターンは「得意の前半でリードを奪い、ライバルたちを焦らせて、そのまま逃げ切る」というものだ。例年以上にピリピリと張り詰めた空気のなかで、自分の実力を発揮するのは難しい。多田の“先制パンチ”が決まったことで、他のスプリンターたちはさらに苦しい状況に追い込まれていた。