男性×男性の「ロミオとロミオ」も話題! 衣装「チカ キサダ」が拓く美の世界とは?
シェイクスピアの戯曲による古典バレエの名作『ロミオとジュリエット』を現代的に解釈し、男性✕男性で演じる『ロミオとロミオ』や『白鳥の湖』のオデットを男性ダンサーが踊るなど、ジェンダーを超えた美を追求するプログラムで話題となった「BALLET TheNewClassic」。 【写真】古い衣装の再利用も…バレエ衣装を手がける「チカ キサダ」秋冬コレクション 今年で第二弾となり、初回から衣装を手掛けるのは、「パンクバレエ」を軸に、反骨精神を携えたエレガンスを表現する「チカ キサダ」の幾左田千佳デザイナー。 幼少期よりクラシックバレエを学び、バレエダンサーのルーツを持つ幾左田さん。彼女が手掛ける衣装は、伝統を慮りながらも、ファッションデザイナーならではな新しい視点でバレエ衣装を再解釈し話題となった。今回、手掛けた衣装への思いや新たに挑戦したこと、そして「チカ キサダ」の秋冬コレクションについて幾左田さんに伺います。
伝統や想い受け継ぐアップサイクルされた衣装
――「BALLET TheNewClassic」はクラシックの枠組みを超えた斬新なプログラムが話題ですが、第2段となる今回で新たに挑戦したことはありますか? 「今回は、アップサイクルに挑戦しています。古い衣装にはそれを身につけて踊っていたダンサーの想いやエネルギーが込められています。その想いを引き継ぎながら今の解釈で衣装をアップデートしたら見たことのない衣装が生まれるのではないかと考えました。 実際に、公募で集めた衣装の量は私の想像をはるかに超え、アトリエが埋まるほどの数えきれない衣装をみなさんが送ってくださった。お送りいただいた衣装にはお手紙を添えてくださる方も多く、皆さんの思い出を共有してもらえたことが創作のインスピレーションとなり、製作の良い影響になったと感じています。 衣装には、それをまとってきた歴代の生徒さんのお名前が刺繍されているものもあり、長い時間のなかで継ぎ足し名前を刻んでいる様が伺えます。汗染み、黄ばんだ羽根、飾りの取れた糊のあと、ボディファンデーションの汚れ……。 皆さんのバレエへの足跡や痕跡を積み重ねてできた歴史を纏う衣装にはエネルギーがあり、それらがとても愛おしく、その重ねてきた痕跡は私にとってスパンコールのように輝いて見えた。 その輝きをぜひ表に出し、光を当て新しい衣装のパワーにしたいと考えました。また、届いた衣装を解体することで、当時の衣装職人の技術を見ることができたことも、デザイナーとしての大きな財産になったと思っています」