男性×男性の「ロミオとロミオ」も話題! 衣装「チカ キサダ」が拓く美の世界とは?
パンクな精神で伝統を新解釈
――今回は男性にビスチエやチュチュを着せ、ジェンダーの枠組みを超えた新しい挑戦が見どころでした。なかでも、どの衣装に思い入れがありますか? 「全員で白い衣装を纏う『ショパン組曲~バレエ・ブラン~』です。(バレエ・ブランとは古典において女性ダンサーたちが白いコスチュームで踊る作品や、その場面を指すバレエ用語)。公募で集まった衣装は白の衣装や裏地が白いものが多かったので、表裏の表情を活かしながら、色々なパーツをチュールで包み製作しました。 1つ1つの衣装は、よく見るとそれぞれ違った表情を持っています。残っていたネームタグを活かしたり、あえて裏返してパーツを見せて使用したり、装飾や材料を配置するバランスでダンサーの個性と融合させデザインに活かしました。 積み重ねてきた歴史と伝統にリスペクトを込めながらも、キャラクターに新しい解釈を加え、いままではなかったビスチエやチュチュを男性に着せ、今ある解釈を壊して新しいことに挑戦してみました。ストーリーをイメージした上で楽しく作らせていただきました」
ジェンダーを超えた美を表現
――幾左田さんのデザインの根底にあるのは破壊と創造。すでにあるものをあえて否定して新しいものを作る姿勢を大事にしていると感じます。今回の衣装製作において一番大事にしたことは何ですか? 「固定概念に捉われず、作品やキャラクターたちを自由に再解釈すること、ファッションを感じることのできる要素を加えて、新しい価値観を示すことを目指しました。『ロミオとロミオ』では、古典バレエの演目の中で最も人気のプリンセス(『眠りの森の美女』オーロラ姫/『白鳥の湖』オデット)の昔の衣装を使用して製作しました。 このプリンセス達は、女性だけではなく、どのジェンダーにとっても憧れの対象だと思います。このように皆が抱く憧れの感情は、ダンサーにとっても表現をする際にパワーになると信じ、その力を借りようと思いこれらの演目に敢えて使用しました。 男の子は「男らしく」女の子は「女らしく」という従来の考えに囚われず、それぞれのキャラクターが持つ魅力を衣装と共に纏うことで、ダンサーの表現に強さを与えられたらと思いました」