ていねいに暮らしたいけど、忙しくて出来ない人へ。長谷川あかりさんが考える料理のヒント
小竹:あと、“シンプル”とか“すっきり”とかも多いですよね。 長谷川:でも、“すっきり”を言いすぎて、それをご指摘いただいたこともあるんです。自分のXで検索をかけてみたら、めちゃくちゃ“すっきり”って言っていて(笑)。すっきり詐欺になっちゃうと思って、最近はちょっと控えています(笑)。
“手をかけた感”が得られるレシピを目指す
小竹:ほかにも作るときに気をつけていることはありますか? 長谷川:簡単になりすぎないようにしています。家庭料理を担う方にとって、簡単で時短がいいというのはもう共通認識なので、基本的には簡単だけど、少し手をかけるとこれだけリターンが来るということを発信したほうが、わざわざ作る意味を感じてもらえる。 小竹:うんうん。 長谷川:簡単すぎるとせっかくかけた10分がスッと流れてしまうというか。だったら5分伸ばしてリターンが大きいことを伝えたほうが作ってみようと思えるし、作った満足度も高まるので、面倒な部分を切りすぎないようにしています。 小竹:クックパッドも「簡単」が一番のキラーワードだったのですが、最近は落ちてきています。もう当たり前になってきているということですよね。 長谷川:「簡単」「時短」は大前提なので、そこはみなさんもう興味がないと感じます。正直、別に作らなくてもいい。作らなくてもいいのにわざわざ作るのなら、簡単だけど少し自分で手をかけた感が得られるものを作ったほうがいいのだと思いますね。 小竹:なるほど。 長谷川:ミールキットが売れたときにそう感じました。ミールキットって自分が料理をしたと思える要素だけが綺麗に残っている。面倒で大してリターンがないところはバッサリとカットしてある。料理を自分で作ってみんなに食べてもらっている、自分で食べているという実感を得られることが、ミールキットの一番の魅力だと私は感じました。 小竹:たしかにそうですね。 長谷川:私のレシピに関しても、そこまでリターンを感じられない手順のところは必要なもの以外は省いて、私がここを頑張ったことでこんなにおいしくなったと語れる部分は残したいと考えています。 小竹:絶妙なバランスですね、料理名が大事と言っていましたが、アイデアはどうやって練っているのですか? 長谷川:外食に行ったときが多いかもしれないです。食材の組み合わせがユニークで、自分では思いつかないようなお料理を提供してくれるお店が好きですね。レシピ名を作るときに参考にするのは、創作性のあるイタリアンやフレンチ、和食とかですね。 小竹:メニューが決まってから、レシピはどういう風に決めていくのですか? 長谷川:自分がプロデューサーになってアイドルグループを作るイメージで考えています。まずはアイドルのコンセプトから決める。どういう衣装を着て、どういう曲を歌って、どういうファンの方がいてとか。 小竹:おもしろい。 長谷川:こういうグループを作りたいというのがあるか、オーディションをしていく中で「この子が中心になる」と決めたら、その子をキーにしてメンバーを決めていく。スター性のある子がいたら、その子を引き立てるコンセプトで、その子とバランスがいいメンバーでグループを作るみたいな決め方をすると思うんです。 小竹:わかります、わかります。 長谷川:レシピも一緒で、料理のコンセプトや要素をまずは決める。例えば、クレソンの料理なら、クレソンのこういう面を見せるとか対象者は誰かとかを決めて、そこから具材を決めてレシピにおろしていく。作りながら「これはおいしい」みたいな作り方ではないので、ずっと紙に向かっている感じです。 小竹:私はメンバーから決めるタイプですね(笑)。冷蔵庫の中を見て考えます。 長谷川:私はその作り方は全くしないんです。「こういう料理があったらみんなこういう気持ちになってきっとうれしいと思う」から入るので、材料とか作り方はその後になりますね。