「時短」ルールで投高打低と逆行のメジャー、盗塁大幅増は大谷翔平だけでない…菊池雄星は「対策」奏功
守る側にとっては負担が増えたようだ。今季ブルージェイズとアストロズでプレーし、エンゼルス移籍が決まった菊池雄星は「投手にとってはタフなルール変更。メリットは一つもない」と苦笑いする。
ルール変更以前は盗塁を警戒し、走者のスタートを遅らせるため、投手がボールを長く持つこともあった。ただ、昨年からは投球間隔が短いうえに、攻撃側も投手があと何秒で投球動作に入らなければいけないかをデジタル時計で確認できるため、そうした駆け引きがなくなった。
新ルール導入から2シーズン目となり、各チームに蓄積される対戦相手の投手のデータが多くなる中、「1回けん制したら、2回目はしない投手もいると思う。それならリードを広く取って走ろうという(走者側の)傾向も、投手によってはっきりしていると思う」と菊池は言う。
菊池自身は今季、けん制で刺す考えは捨て、クイックモーションに磨きをかけた。試合の序盤に速いクイックで投げられることを相手チームに印象づけて盗塁を未然に防ぎ、許した盗塁数は23年の「14」から「8」へと減少。「(ルール変更に)対応できている」と口にする。
チームによっては、戦い方も変化している。
今季最も盗塁が多かったのは、223個のナショナルズ。22年は75個、23年は127個で、ルール変更前から約3倍に増えた。マイク・リゾ・ゼネラルマネジャー(GM)は「新しいルールが盗塁に影響を与えている」と率直に認める。「私たちを含め、より多くのチームが盗塁を積極的に仕掛けるようになっており、打線にスピードのある選手を加える戦略になってきている」と最近の傾向を分析する。
大谷を上回り、67盗塁で初のナ・リーグ盗塁王に輝いたデラクルスを擁するレッズのチーム盗塁数は207個で、リーグ3位だった。ニック・クラール編成本部長は「走塁でも守備でも、私たちの目標はチームの運動能力を高めることだった」とルール改正前からの強化方針を明かしつつ、「新しいルールは私たちの助けになっている」と語った。