「時短」ルールで投高打低と逆行のメジャー、盗塁大幅増は大谷翔平だけでない…菊池雄星は「対策」奏功
[球景2024 投高打低]<番外編>
プロ野球では近年、科学的なアプローチによる投手の進化が著しい。今季も一層、顕著となった「投高打低」の背景と、現状打破を試みる打者側の取り組みを追った。
けん制は実質2度まで
ドジャースの大谷が今季、史上初の「50本塁打、50盗塁」を達成した米大リーグでは、2023年から導入された新ルールによって盗塁が大幅に増えている。日本のプロ野球のような「投高打低」の傾向は見られず、投球間隔も制限される投手にとって厳しい環境となっている。
10月30日のワールドシリーズ(WS)第5戦、ドジャースが1点リードして迎えた九回の攻撃だった。一死一塁で、ヤンキース4番手のウィーバーが3度目のけん制球を一塁に送った。リードした走者が素早くベースに戻ると、一塁塁審は両手を上げてプレーを止め、走者に対して二塁に進むように指示した。昨季から導入された「3度目のけん制でアウトにできなければ、走者には進塁が許される」という新ルールが適用された形だ。
投手のけん制は実質的に2回までに制限され、走者はスタートが切りやすくなる。さらに、ベースが約38センチ四方から約46センチに拡大されてベース間の距離がわずかに縮まったほか、投球間隔に時間制限を設ける「ピッチクロック」も導入された。
新ルールが適用された23年のメジャー全体での盗塁総数は、前年の22年と比べて約1・4倍の3503個に達した。24年はそれを上回る3617個。大リーグ公式サイトによると、1900年以降では3番目に多かった。
昨季までの大谷のシーズン最多盗塁数は、2021年の「26」だった。今季、最終的に「59」まで伸ばすことができたのは、打者に専念したプレー環境の影響に加え、ルール変更が有利に働いた側面もあるはずだ。23年にはアクーニャ(ブレーブス)が41本塁打、73盗塁で「40本塁打、40盗塁」を17年ぶりに達成しており、大谷が「50本塁打、50盗塁」をマークしたことで2年連続で大記録が生まれた。