「医療費が食い物にされている」訪問看護師たちのMeToo運動 難病や末期向け老人ホーム、精神科で「不正、過剰な報酬請求」
「夜、看護師が1人で入居者さんの部屋へ行き、ドアを少し開けて、眠っていることを確認しただけでも『2人で30分訪問した』ように記録を書いて、報酬を不正請求しています」 スーパー・コートで働く看護師、三好愛菜さん(仮名)はそう話す。PDハウスについて綿引さんが証言したのと同じことが行われているというのだ。 「上司から『1日3回は絶対行って』と言われる。『必要ない人もいます』と言うと、『そこは考え方次第だ』とか『会社の命令だから』という答えだった」 共同通信は、同社が今年1月に各ホームの施設長らを集めた会議の議事録を入手した。それによると、役員が2024年度の目標として、複数人での訪問を100%にするよう指示していた。 三好さんはこう話す。「役員が施設長たちに『なんで目標を達成できてへんのや』と圧をかけるので、施設長たちはおびえて言いなりになっている」 厚生労働省に見解を尋ねると、こう答えた。「複数人での訪問が必要かどうかは、あくまで患者の状態に応じて判断すべきで、一律に割合を指示するのは不適切だ」
会社側はどう考えているのか。スーパー・コートに取材すると、次のように回答した。 「複数人での訪問看護に関する目標値は、必要と思われる入居者に実施できていないケースがあるため、必要な方全てに対応できるようにするためだ。過剰な診療報酬の請求には当たらないと考えている。訪問回数も必要性に応じたものだ」 「不正請求」との指摘に対しては「会社として指示した事実は一切ない。過去に発生した過誤請求については、既に返還した」としている。 ▽「声を上げないと」 記者はこの問題について取材を始めた昨年秋以降、複数の会社の看護師20~30人に話を聞いた。 読者の中には「お金で情報や文書を買っているのだろう」と思う人もいるかもしれないが、金銭のやりとりは一切ない。お金を求められたこともないし、そういう取材はしていない。「どうして話そうと思ってくれたんですか」。そう聞くと、次のような答えが返ってきた。