「医療費が食い物にされている」訪問看護師たちのMeToo運動 難病や末期向け老人ホーム、精神科で「不正、過剰な報酬請求」
パーキンソン病などの難病や末期がんの人を対象にした有料老人ホームで、過剰な訪問看護や不正な診療報酬の請求が相次いで指摘されている。記者が今年1月、精神科の訪問看護について同様の問題を報じて以降、「私の勤務先でも同じことをやっています」「うちの会社とそっくりです」といった声が看護師から続々と届いている。さながら「MeToo運動」のようだ。会社に情報提供者を特定される「身バレ」の不安を感じながら、それでも看護師たちが内部告発するのはなぜなのか。肉声を聞いてほしい。(共同通信=市川亨) 【写真】性交渉などの前に服用すると、感染を99%防ぐ効果が… 国内では使用している医療機関も
▽睡眠センサーのチェックだけで… 「こんなことをやっているのかと、カルチャーショックでした」 国の指定難病の一つ、パーキンソン病専門の有料老人ホームを各地で展開する「サンウェルズ」(本社・金沢市)。今年同社に転職した看護師の綿引歩さん(仮名)は、取材にそう話した。 サンウェルズは「PDハウス」という名称で北海道から熊本県まで老人ホームを約40カ所運営。定員は計約2千人。PDはパーキンソン病の英単語の頭文字だ。 社長の苗代亮達氏(51)が若い頃に大病を患ったことをきっかけに、2006年に前身の会社を金沢市で設立。ホームに併設する形で入居者向けに訪問看護と訪問介護のステーションも運営している。 ここ数年で事業を急拡大し、今年3月までの4年間で売上高は約5倍、経常利益は約13倍に増えた。社員は約2700人いる。今年7月には東証プライムに上場。医療・介護業界では注目株の会社だ。
そんな会社で綿引さんが「カルチャーショック」と感じたことは何なのか。 「入居者の睡眠状況を検知するセンサーが各居室に設置されているんですが、夜間にモニターの画面を見て、眠っているのを確認しただけで『2人で訪問看護を約30分した』ことにして、診療報酬を請求しているんです」 夜間に看護師が居室のドアを開け、数十秒~数分で安否確認した場合でも、やはり2人で約30分訪問したように記録しているのだという。「私が勤務するホームでは、ほとんどの看護師がそうしたことをしている」と綿引さん。 訪問看護は制度上、原則30分以上と定められている。数十秒や数分では報酬は請求できない。虚偽の記録で請求すれば、不正受給に当たる。 ▽「必須で入力」とマニュアルに 綿引さんが「おかしい」と感じていることがもう一つある。「入居者の症状や必要度に関係なく、1日3回、複数人で訪問することが最初からほぼ決まっているんです」