ウチのアパートから退去してほしいが…賃借人との立ち退き交渉、大家さんの立場を危うくする〈絶対NG行為〉とは?【不動産専門弁護士が解説】
部屋の荷物を勝手に処分・部屋の鍵を勝手に替えるのは厳禁!
そのほか、注意すべき行為に「夜逃げした部屋の荷物を勝手に処分する」「賃料不払いが続いている部屋の鍵を替える」といったものがあります。これらの行為は、絶対に行ってはいけません。 法律上、アパート自体が大家さんのものであっても、「貸した部屋」は「他人のもの(占有)」であるため、勝手に部屋へ入る、鍵を付け替える、荷物を処分する、といった、もの(占有)を侵害する行為は、器物損壊ないし建造物侵入罪になりかねないからです。 夜逃げ等で連絡が取れない場合でも、部屋の荷物の所有権は借主側にあるため、それらを勝手に処分する行為は「窃盗ないし横領」罪になってしまいます。 大家さん側からすれば大変もどかしいですが、賃料不払い等の借主側による権利侵害に対し、実力行使で対処する自力救済行為は、原則全面的に禁止されています。たとえ連絡がつかない場合でも、借主の権利に配慮し、裁判所を通さなければ適法な手続きにならないのです。 最近では立ち退き問題を扱う弁護士事務所も増えているとはいえ、トラブルを大きくするのを防ぐためにも、極力弁護士を介入することなく、大家さん自身で対応するのが好ましいといえます。その際、直接交渉に関する相談やアドバイスを管理会社から受けることについては、法律上まったく問題ありません。
立ち退き交渉は「借主側の事情」に配慮することがポイント
大家さんは、立退料を求めてくる賃借人に対し、どうしてもクレーム対応のような感覚に陥ってしまいがちですが、日々の仕事や生活の合間を縫って引っ越しをするのは大変です。借主側のそれらの事情に大家さんが耳を傾ける態度がなければ、なかなか交渉はうまくいきません。 とくに建物の老朽化による立ち退きは、結果を急ごうとするほど、賃借人・賃貸人間のトラブルが増えてしまいます。老朽化建物の運営計画は、大家さんが借主の気持ちを慮りながら、更新時期を踏まえつつ長期的に対応していくことが大切なのです。 (※守秘義務の関係上、実際の事例と変更している部分があります。) 山村法律事務所 代表弁護士 山村暢彦
山村 暢彦
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