【夫婦の距離】「定年後は初対面の人とおしゃべりを楽しめない...」会話が続かない夫への妻の不満~その1~
“笑えなかったあだ名”は『ちょっかいおやじ』『モトセン』『背後霊』
「若い女の子にばっかり話しかけてるから『ちょっかいおやじ』とかね(笑)。あと、ありがちなのは『モト〇〇』。退職したての男の人は『実はこの前まで〇〇会社で専務やってましてね……』とか挨拶する人がけっこういるんですよ。そうすると、一発で『モトセン』(元専務の略)に決まり。ウチのジムには『モトセン』だけでも3人くらいいますよ。昔の肩書きってジム仲間のコミュニティには不要というか、むしろ邪魔なものだから、『ああ、そうですか。それで?』って感じになって……恥ずかしいでしょう? だからウチの主人には、『くだらないから、昔の手柄話はしないように』って釘をさしてるんですよ」 「昔の手柄話はくだらない」とは、なかなか手厳しい。以前の職業が何であれ、下ろした肩書きを振りかざすような自己紹介は不評なのだそうだ。 「それと、奥さんがかわいそうだなぁと思ったのは、『背後霊』。それまでいつも話題の中心にいた奥さんが、旦那さんと通うようになってから、すっかりおとなしくなっちゃって」 『背後霊』とは、推定年齢70歳の男性・Nさんのことだ。ある日、ジムの常連だった妻と一緒に、Nさんもエアロビクスのクラスに現れるようになった。初めてのエアロビに戸惑う姿は愛らしくもあり、さほど気に留められなかったのだが、日が経つにつれ、Nさんの様子が女性陣の話題に上るようになったという。 「奥さんはとっても活発な人で、いろんなプログラムに参加されていたんですよ。旦那さんは正反対で、本当に無口な人。青白い顔をして、いつも奥さんの後ろに隠れるように立っているんです。で、ついたあだ名が『背後霊』」 横で聞いていた正さんが、苦々しい表情で口を開いた。 「そんな話を聞かされたら、自分も何言われるかわからないなぁと思うよね。入会するのをやめようかとも思ったんだけど、近場で手頃に通えるジムが他になくて、他人のふりをするほうを選んだわけですよ」 ところが、いざ入会した正さんは、あやうく背後霊の仲間入りをしそうになり、まりこさんにたしなめられたという。 【~その2~は関連記事から。】 取材・文/大津恭子
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