このままでは怖いマイクロプラスチック 知らないうちに拡散する脅威の源
《海を漂うプラスチックごみはどこから?》
マイクロプラスチックの源となるのは、プラスチック製品の破片だけではありません。私たちの生活から出るものとして、洗濯などで衣類から抜け落ちる化学繊維、スクラブ洗顔料などで使われるマイクロビーズ、水回りなどの掃除に使われるメラミンフォームスポンジが挙げられます。これらの多くは、家庭排水に混じって下水処理場へと運ばれていきますが、小さ過ぎるために下水処理場を通過して海へと流れ出てしまうことがあるのです。
普段何気なく使っているスポンジからも、知らないうちに摩耗によって削られた小さな破片が環境中に流れ出てしまっているというのは衝撃でした。ほかにもあります。「レジンペレット」と呼ばれるプラスチック製品の中間材料もマイクロプラスチックの源になります。 工場でレジンペレットを作る過程や、それをプラスチック製品の原料として運ぶ過程で、地表に落ち、その中で雨などによって川や海に流されたものは、海岸に漂着します。すべての流出を避けられない面はありますが、そもそもプラスチック製品を使う量を減らせば、原料となるレジンペレットを使う量も減るため、流出量も減るのではないかと高田教授は推察します。
《海にはプラスチックごみがどれくらいあるのか?》
海には、一体どれくらいのプラスチックごみがあるのでしょうか。あまりに膨大なので一つひとつ数えるわけにはいきませんが、採取した海水サンプルの中にあるプラスチック量から、その海域全体にあるプラスチック量を推計することができます。 2014年に発表された研究によると、世界の海を漂うプラスチックは5兆個にものぼるといわれています。また、2016年に世界経済フォーラムが発表した報告書(英文、PDF)によると、毎年少なくとも800万トンのプラスチックごみが海に流れ出しており、2050年には海のプラスチック総重量が、海にいる生物の総重量を超えるともいわれています。
《海の生き物に影響はあるのか?》
それだけたくさんのプラスチックが海を漂っていると、海にすむ生き物への影響が気になります。海に流れ出たプラスチックは、その大きさに応じてさまざまな生き物に食べられうることがあります。大きなプラスチックほど大きな生き物が食べ、マイクロプラスチックのように小さくなるとイワシなどのような小型の魚に取り込まれます。 高田教授はハシボソミズナギドリという水鳥を対象に、プラスチックの体内への取り込みを研究していますが、それによると、1羽あたり0.1~0.6グラムのプラスチックの破片が消化管から検出されました。これを人間の体重に換算すると約60グラム。実に500ミリリットルペットボトル2~3本くらいにあたり、それだけのプラスチックが体内にあることを考えるとぞっとします。実際、プラスチックが胃の中にあることで、本来摂取すべき餌を食べられず、栄養失調になって死んでしまう個体もいるそうです。また、ビニール袋などの誤飲により窒息死してしまうこともあります。