このままでは怖いマイクロプラスチック 知らないうちに拡散する脅威の源
磯辺教授の研究室では、調査で分かったマイクロプラスチックの分布状況から、それらがどのように海洋を移動してきたのかを解析・モデル化し、今後、海に浮かんでいるマイクロプラスチックがどのように広がっていきそうかを予測する研究を行っています。 磯辺教授は、環境省による海ごみ調査にも学識者として携わっています。その調査の中で、海を漂流するごみを観測して得られたデータを基に、それらのごみがどのように海を移動していくのかを推定するシミュレーションを行いました。以下のシミュレーション動画を見ると、日本から出た「海のごみ」が領海を越えた地域まで広がっていく可能性があることが分かります。 ■シミュレーション動画(環境省HPより抜粋) ・【海洋ごみシミュレーション(平成28年度)】能登半島西方 ・【海洋ごみシミュレーション(平成28年度)】東シナ海 ・【海洋ごみシミュレーション(平成28年度)】鹿島灘 ・【海洋ごみシミュレーション(平成28年度)】熊野灘
これは東アジア域だけではありません。今年4月には、ドイツの研究チームが北極海の氷で記録的な濃度のマイクロプラスチックが観測されたと発表しました。これらのマイクロプラスチックは、北太平洋から流れ込んだプラスチックごみのほか、北極海において船舶に使われた塗料や漁具に由来すると考えられています。
2050年には海の生物の総重量を超える?
さらに私はもう1人の研究者を訪問しました。東京農工大学 農学部 環境資源科学科の高田秀重教授です。高田教授の研究は、マイクロプラスチックが化学的にどんな特徴を持っているのか、またそれらが環境に及ぼす汚染の影響はどのようなものなのかを調べることです。
この訪問で、マイクロプラスチックについてさらに多くのことを知ることができただけでなく、これをきっかけに1つのイベントが実現しました。それが昨年12月に日本科学未来館で企画したサイエンティスト・トーク「どうする?ごみだらけの海~石油文明が生み出したマイクロプラスチック問題」です。 登壇者として高田教授をお招きし、マイクロプラスチック問題の現状や研究についての話をお聞きしたほか、イベント後半では身の回りからプラスチックを減らすアイデアについて参加者を交えたディスカッションを行いました。 高田教授はマイクロプラスチック問題の現状について次のように説明しました。