このままでは怖いマイクロプラスチック 知らないうちに拡散する脅威の源
海に拡散するマイクロプラスチック
これを見た私は、マイクロプラスチックの現状を調べるべく、昨年3月、マイクロプラスチックの研究をしている磯辺篤彦教授(九州大学応用力学研究所 大気海洋環境研究センター)に話を聞きに行きました。
磯辺教授がマイクロプラスチックの研究を始めたのは2008年ごろ。当時、論文はそれほど多くなかったそうですが、今では頻繁に論文が発表され、新しくてホットな研究分野になってきたと言います。 磯辺教授の研究は、マイクロプラスチックの動態、つまり海に流れ出たプラスチックがどのように5ミリ以下にまで小さくなり、運ばれ、消えていくのかを調べることです。プラスチック製品の多くは海水に浮くため、表層付近を漂流します。そのため、研究に使う海水サンプルは海面から1メートルほどの深さで採取するそうです。
「写真2」の左は南極海から送られてきたサンプルです。底に見える白いものはプランクトンだそうです。この海水サンプルから、写真右のように固体物をピンセットで一つひとつ取り出しては水で洗う作業を繰り返していきます。
こうして集まったプラスチック片が「写真3」です。小さなマス目が5ミリ×5ミリを表しており、その中に収まるものがマイクロプラスチックに区分されます。それぞれの破片の大きさは、顕微鏡を使って一つひとつ見ながら測ります。 また、見ただけではプラスチックかどうか判断できないものもあります。その場合は、吸光分析という方法を使い、破片に含まれる成分を科学的に分析して判別します。このようなとても地道な作業を研究員の方たちが手際よく進めていました。 磯辺教授の研究室が2014年に東京海洋大学と共同で行った調査によると、主に日本海を中心とした東アジア域で、1平方キロあたりに浮かんでいるマイクロプラスチックの量(=浮遊密度)が、世界の他の海域に比べて突出して多いことが分かりましたす。これは、東アジア諸国から海に流れ出たプラスチックが、対馬海流や黒潮の影響によって日本近海に漂流してきたためと考えられています。このことから、東アジア域はマイクプラスチックの「hotspot」(ホットスポット)と言われています。