アニメはサブカルからメインカルチャーへ。「すずめの戸締まり」「SPY×FAMILY」プロデューサーらに聞くアニメ業界最前線
世界的にもアニメ視聴者のパイが増えている
── ただ、制作費が上がる中でアニメのクオリティも上がり、世界的な注目度も高まっていますよね。 中武:中国のある企業とミーティングした時に、アニメ制作会社へのリスペクトが強くあってびっくりしました。社長の笑顔にも嘘がない。彼らにとっても中国における配給で大きな利益を得ているから、メリットがあると感じているってことだと思いますが。 ── 岡村さんは東宝時代から海外での放送権販売をされているようですが、変化は感じますか。 岡村:そうですね。値付けも上がってきています。もうアニメビジネスは当たり前に日本だけじゃなく海外まで広がっていて。それこそ海外売りって、MG(※minimum guarantee=最低保証金。権利料の前払い)でいくらの値段がつくのかが大事なんです。制作費が高くなっている分、そこでしっかり値段をつけてもらう必要がある。その上で、製作委員会にどれだけ利益をもたらせるかが重要です。 ── 実際にどれくらい海外売りで制作費を回収できるのでしょうか。 岡村:7~8年前には、作品によってはシリーズものの制作費をカバーできるぐらいの値段はもうつけてもらっていました。値付けしてくれるのは映画の配給会社や、Crunchyroll(クランチロール)やNetflixなどの配信サービスです。 ── 配信によるアニメの広がりは大きいですよね。2024年は『ダンダダン』がNetflixの非英語作品のグローバルTOP10で2位になりました。 岡村:全世界だと、アニメの再生回数はすごいことになっています。国内でもそうですが、世界的にもアニメを見る人のパイがどんどん増えている。その結果、値付けも上がってきているのだと思います。
クリエイターにいかに還元するか
── 同時に、アニメ業界では現場で作っている人にいかに還元していくか、というテーマがありますよね。福島さんと中武さんは、2022年に株式会社JOEN(じょえん)という企画・プロデュース会社を立ち上げられて、その問題に取り組んでいらっしゃる。 福島:はい。作る人たちにお金を還元するには、仕組みをまず作らないといけない。CloverWorksと WIT STUDIOは『SPY×FAMILY』で共同制作をしてきた縁もあったし、1社1社で交渉するよりも2社で交渉した方がいいだろうということで一緒に会社を立ち上げました。弊社の親会社であるAniplexと、集英社にも出資いただいています。 ── 官報によると2024年3月期決算は最終利益が1600万円と黒字になっているようですね。 福島:お陰様で業績は伸びてきています。どんな作品に関わっているのかは現状明かしてないのですが、ショート(短編)の作品などは世に出ていますし、テレビシリーズや映画の企画にも携わっています。