【京王杯2歳S回顧】ソニンクとシンコウエルメスの血を受け継ぐパンジャタワー 勝因は完璧なレース運び
背景にいるソニンクとシンコウエルメス
5回東京の初日、京王杯2歳Sは良馬場が多い重賞だった。2000年以降で不良1回、稍重3回。最後は2009年エイシンアポロンだから15年ぶりだ。若駒にとって厳しい東京。できれば良馬場で負担なく運びたいところ。今年も稍重馬場が結果に与えた影響は大きい。それでも時計は1:21.2で、歴代4位タイ。東京の芝は相変わらず頑健だ。 【アルゼンチン共和国杯2024 推奨馬】末脚の破壊力はメンバーNo.1! 左回りは複勝率85.7%で絶好の舞台(SPAIA) 勝ったパンジャタワーの母クラークスデールの母はアコースティクス。極悪馬場のダービーを制したロジユニヴァースの母なので、パンジャタワーにとってロジユニヴァースは伯父にあたる。なるほど、道悪は上手いわけだ。 ロジユニヴァースの血統ということはソニンクの牝系になる。モンローブロンド、ノットアローン、ランフォルセ、ノーザンリバーとソニンクの仔は走り、ルミナスポイント、ヴァイスハイト、ライツェントと優秀な繁殖牝馬を多数輩出した。そんな活力ある一族にタワーオブロンドンが配合され、パンジャタワーが生まれた。 タワーオブロンドンも2017年京王杯2歳Sを制しており、産駒の重賞初制覇は親子制覇でもあった。その後は京王杯SCも勝ち、東京芝1400m重賞をコンプリート。秋にはスプリンターズSでGⅠタイトルを手にした。 タワーオブロンドンの祖母はシンコウエルメス。ケガのため、わずか1戦で現役を退くも、兄はGⅠ・4勝の英国ダービー馬ジェネラス、一族にはGⅠ・9勝トリプティクがおり、そもそも繁殖としての価値を見込まれていた。現役引退となったケガは重度の骨折であり、助けられないと判断されかけるも、管理していた藤沢和雄調教師が懇願し、命をつないだのは有名な話だ。 この藤沢和雄氏と当時のスタッフの執念が皐月賞馬ディーマジェスティやタワーオブロンドンへとつながっていった。日本で着実に枝葉を広げるソニンクとシンコウエルメスを背景にもつパンジャタワーは奥深さを感じざるを得ない。
レースセンス光るパンジャタワー
レース振りも味があった。中団からレースを進め、悪条件のなか、上がり600mは最速タイ33.8を記録。悪い馬場を苦にしなかった。最後の伸びにつながったのは前半のリズムにある。スタートを決め、行きたい馬をやり過ごしつつ馬場の外目に持ち出し、マイネルチケットの背後で息を入れた。 雨の中の若駒同士のレースらしくムキになる馬も出るなか、終盤までじっと我慢できた。無駄なことをしないのは、ここから先のレースに向け重要な要素といえる。センスある走りはタワーオブロンドン譲りだ。 最後の直線は各馬、外を目指したが、いちばん外にいったのはパンジャタワー。マイネルチケット以下、前の馬も手応え以上に粘りをみせており、とらえたのはゴール手前と辛勝のように映るが、むしろ勝つべくして勝ったレースだろう。現時点では完璧なレース運びだった。