発達支援のプロが教える!発達障害のある子が伸びる声かけ・褒め方・叱り方
大事なのは子ども一人ひとりへの配慮
小嶋:ここまでいろいろと具体的なアドバイスを申し上げてきましたが、やはり共通するのは個々に配慮していくことでしょうね。どうしても落ち着いていられない子には、動くための配慮をしたらいいと思うんです。以前、アメリカの小学校に視察に行ったんですが、そこにはセンサリートイがたくさん用意されていました。たとえば練り消しのようなものが各机に用意されていて、どうしても授業に集中できなくなったら、それをにぎにぎしてもらう。すると落ち着いて授業を受けられる。そういった感覚に対する配慮がしっかりなされていることに感動するとともに、日本の学校でも取り入れていくべきだと感じましたね。 ――「こうしなさい!」と強制するのではなく、子どもたちのやりたい動作を受け止めてあげるということでしょうか? 小嶋:そうですね。彼らが求める感覚をちゃんと理解し、受容してあげること。それが教育現場にも必要だと思います。 りっきー:それに加えて、現代の子たちは「経験する場」が圧倒的に少ないのも問題だと感じています。たとえば昔は、水道の蛇口は「ひねる」ものでしたよね。その動作を一日に何十回もしていました。でもいまはワンタッチで水が流れるので、必然的に「ひねる」という動作が奪われてしまう。他にもさまざまな物事が便利になっている一方で、子どもたちから「動作の積み重ね」という経験を奪っているところもあると思います。そういった経験不足が積み重なって、ちょっと不器用とか、文字がうまく書けないとか、もしかしたらグレーゾーンや学習障害と言われることにつながるかもしれない。そういった点で、私はモンテッソーリの取り組みが幼児期~就学初期の子どもの身体の育ちや感覚を整えることにつながると考えて、子どもたちにさまざまな経験を提供できるようにしています。
【PROFILE】小嶋悠紀(@oshietekojit)
こじまゆうき/1982年生まれ。発達支援コンサルタント、元小学校教諭。信州大学教育学部在学中に発達障害がある人を支援する団体を立ち上げ、代表を務める。卒業後は長野県内で小学校の教員を務めながら特別支援教育の技術などをテーマとする講演を全国で実施。株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKSを立ち上げ、県の保育士等キャリアアップ研修や、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の養護教諭むけの研修なども担当する。直接の指導や支援会議への参加を通じてこれまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、センサリーツール「ふみおくん」の開発にも携わった。近著に『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』(講談社) Instagram:@oshietekojit