敗れたストイコビッチ監督は森保Jの実力をどう見たのか?「日本に改善すべき点があるとすれば…」
戦いの舞台をサガン鳥栖からヨーロッパへ移して4年。時間の経過とともに存在感と評価を高め、発する言葉に重みも加わった24歳は、チーム全体として高みを目指していくためにも「もっと勇敢にボールを前へつけないと」とあえて檄を飛ばした。 東京五輪世代のU-24代表にオーバーエイジとして合流した、キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)ら3人の主力が不在。なおかつ、不動の1トップを担ってきた大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)も左足の内転筋を痛めて離脱した。 さらに9月に始まる予定のアジア最終予選でもけがや出場停止、あるいは新型コロナウイルス禍による招集制限で主力を欠く可能性がゼロではない。強敵ばかりが集う戦いを勝ち抜いた先のカタールワールドカップをも見すえているからこそ、虎穴に入らずんば虎子を得ず、とばかりに鎌田は勝利という結果よりも内容に重きを置いた。 そして、ストイコビッチ監督もまた9月以降に照準を定める。ヨーロッパ選手権出場を逃した母国の再建を託され、始まったばかりのワールドカップ予選のグループAでポルトガル代表と勝ち点7で並び、得失点差でわずかに及ばない2位につけている。 セルビアとして2大会連続、通算3回目のワールドカップ出場を現時点における最大の目標にすえる。だからこそ、9月以降に残り5試合を戦う年内のワールドカップ予選をにらみながら、6月の国際Aマッチデーをあえて底上げの時期にあてた。 パルチザンに所属していた浅野拓磨らとの争いを制し、セルビアリーグの得点王を獲得した25歳のFWミラン・マカリッチ(ラドニク・スルドゥリツ)がシュートを外した前半43分には、悔しさのあまりに着用していたマスクをその場に叩きつけた。 懐かしさすら感じさせるしぐさを見せた指揮官は、オンライン会見で「日本代表の今後のご活躍を祈ります」と笑顔を浮かべた上で、こんな言葉を続けている。 「日本が攻勢に出て、私たちは守備的にならざるをえないと予想していた。そのなかで縦に深いボールを出させないようにと、選手たちには伝えていた。結果として日本の中盤の選手を、前半は抑えることができた。本番となる9月以降のワールドカップ予選へ向けて、それまでにチームを仕上げるのが私の目標であり、セルビア代表の流れでもある」 日本の中盤とは主力に定着しつつある鎌田であり、伊東となる。コロナ禍における日本滞在を「ホテルから一歩も外出できなかったのは、やはり異常な状態でした。早くウチへ帰りたいですね」と苦笑いしたストイコビッチ監督は、就任5戦目で喫した自国の初黒星を介して、貴重な教訓を森保ジャパンに与えてくれた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)