「ギリギリになってから本気出す」人がハマりやすい“落とし穴” これが当たり前になると「おそろしい顛末」が待っている
将棋の世界では、8つのタイトルがある。それぞれ、タイトルを手にすると竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖と呼ばれる。 記憶に新しい出来事としては、2023年10月11日、藤井聡太氏が21歳2カ月にして、全てのタイトルを冠した。つまり、この時点で藤井竜王であり藤井名人であり、藤井棋王であり……なのである。驚異的な肩書の多さである。1つ増えていてもギリギリ気づかない気すらしてきた。 そんな藤井氏は、各タイトル戦前に記者から意気込みについて聞かれる時、冷静な面持ちで殊勝かつ丁寧なコメントをすることが多い。
その際、対戦相手への印象や分析についてはさまざまな角度から言及する一方で、自身の在り方について話す時の内容は、常に淡々としており大きく変化していないように見受けられる。 例を挙げると、先ほどの藤井氏が全タイトルを手にした日、京都市のホテルで行われた将棋の王座戦五番勝負第4局で、永瀬拓矢前王座を激闘の末に破り、史上初の八冠制覇という快挙を成し遂げた藤井聡太八冠は、記者からの「追われる立場になったことで戦い方は変わるか?」という問いにこう答えた。
「将棋は盤を挟んでしまえば、立場の違いは全くないので、これまでと変わらない気持ちでいいのかなと思う」 八冠を制した上でもこの心持ち、まさに八冠の器と誰もが納得するコメントであった。 私だったら「いえーい!」と叫んで勝利に浮かれつつも、追われる立場となったことへのプレッシャーを想像して顔を真っ青にしていただろう。 しかし、スポーツなどの勝負の世界に広く目を向けると、圧倒的な実績や強さを持つ人たちは、藤井氏と同じような質問をされると皆共通して「これまでと変わらない」「いつも通り」といった主旨のコメントを残しているように思う。
つまり、圧倒的な実績や強さを持つ人たちは、目の前の勝負や活動に、都度特別な思い入れを持っていないのだ。むしろ、継続性や持続性、普段の平常心を重宝し意識しているように感じられる。 これはなぜか? ■継続性のあるガソリンを取り込もう それは、彼らが自分を勝利や成功に導く「ガソリン」を理解しているからに他ならない。 ここで言う「ガソリン」とは、メンタルを「エンジン」に例えた時に燃料となるもののことだ。