もがくJ名門、かつての力強さ消え「もっと良さを」 古巣復帰で「隙のない、優勝できるチームに」【インタビュー】
迷走を続ける鹿島、欧州挑戦から復帰した元日本代表MF三竿健斗が見た現状
常勝軍団として、Jリーグで最多タイトルを勝ち獲ってきた鹿島アントラーズは近年、苦戦が続いている。今季はリーグ、ルヴァン杯、天皇杯のいずれも勝ち獲れず、10月にはランコ・ポポビッチ監督との契約を解除。今夏、欧州挑戦から古巣へ復帰した元日本代表MF三竿健斗は、現状をどう受け止めているのだろうか――。(取材・文=河合 拓/全5回の5回目) 【写真】「ステキな2人」三竿健斗が美人元アナウンサーとの結婚を発表した瞬間 ◇ ◇ ◇ 東京ヴェルディでプロデビューを飾った三竿が、鹿島へ移籍したのはまだ10代の頃。2016年に入って、初めて練習参加した際、そのレベルの高さに衝撃を受けたという。 「紅白戦からレベルが違いました。プレッシャーの速さだったり、ボールの技術だったり、プレースピードだったりが全然違って。最初はみんなリラックスしているけれど、あるところを境に急にスイッチが入って、すごい緊張感のある中で練習をやっていたのがすごく印象的でしたね。大体ウォーミングアップが終わるくらいでスイッチが入るんです。別に誰が声をかけるわけでもないのに、勝手にそういう緊張感のある雰囲気になったのを覚えています」 鹿島の強さとはどこにあるのか。その源を知りたいと言うと、選手たちは「練習を見たら分かりますよ」と異口同音に答えた。J最多タイトルを獲得している鹿島は「常勝」という枕詞がつけられ、一度リードを奪えば、そこから逆転されることは皆無に等しかった。ただ、近年、その姿は影を潜めている。今シーズンは先制しながら敗れた横浜F・マリノス戦(1-4)やジュビロ磐田戦(1-2)、2点のリードを守り切れなかった湘南ベルマーレ戦(2-3)と、かつての力強さがない。 徹底的に勝利を追求するいわゆる“鹿島イズム”が薄まってきているのではないか。そんな印象を受けていることを三竿に伝えると「それ(鹿島イズム)は外部の人が感じるものだと思うので、あまり考えたことはないです」と答えた。ただ、欧州移籍前後でのチームの変化について問うと「それはあります」と即答し、言葉を選びながら語り始めた。 「ポポビッチ前監督はすごく情熱的な指導をする監督で、僕が鹿島に来てからの視点で言うと、これまでにないタイプの監督でした。今までは選手主体だったけれど、監督主体で動いているな、とシーズン途中に入って感じました。だから、今までのやり方をどこまで自分が出していいのかっていうのも正直、難しい部分はあったんです」 欧州から帰還し、その目で見たもの、それは三竿が知る鹿島ではなかった。試合中に選手同士で解決できていた出来事が、外からの指示を待つようになってしまい、対応が遅れる状態になっていたのかもしれない。三竿は言葉を続ける。 「それ(選手主体でできたこと)が鹿島の良さだと思うんで。選手たちで言い合いながら。言うには責任が伴いますし、自分もやらなきゃいけない。そういう緊張感の中で求め合うっていうのが良さの1つだったなっていうふうには思います。それが今はないのかなって」