J1昇格を狙うアビスパ福岡を変えたアパマンから来た新社長
元日本代表主将の井原正巳監督に率いられるアビスパ福岡が“勲章”を引っさげて、29日から幕を開けるJ1昇格プレーオフで5年ぶりのJ1切符獲得に臨む。 J1へ自動昇格できる2位の座を、ジュビロ磐田と激しく争った状況で迎えた23日のJ2最終節。FC岐阜を4対1で一蹴して8連勝、チーム記録を塗り替える12戦連続無敗でフィニッシュした福岡は勝ち点を82に伸ばしたが、磐田も後半アディショナルタイムの劇的な決勝弾で82に並んだ。 得失点差で及ばず3位に終わった福岡だが、J2が22チーム体制となり、J1昇格プレーオフが導入された2012年以降の3位チームでは最多となる勝ち点を積み重ねた。 ハイレベルの軌跡を描いてきた証となる数字。井原監督は「十分に自動昇格に値する勝ち点。残念な思いをパワーに変えて、自信をもって臨みたい」とV・ファーレン長崎をホームに迎える準決勝へ腕をぶした。 昨年の福岡はJ2全体で4番目に多い60失点を喫し、16位に低迷した。翻って、新体制となった今年は4番目に少ない37失点。9位タイだった52得点は、上位2チームに次ぐ63得点にアップした。 守備への意識を劇的に高め、ベースを作ったうえで攻撃でも個性を発揮させる。ピッチ上の改革を進めたのが井原監督ならば、ピッチ外でのそれは川森敬史社長(49)の手腕によってもたらされた。 不動産賃貸仲介のアパマンホールディングス常務と兼任する形で、福岡の社長に就任したのは今年3月。川森社長は「地に足のついた経営」を宣言したうえで、2つの年度目標を掲げている。 オフィシャルスポンサー数を1000社に到達させ、ホームのレベルファイブスタジアムの平均観客数を1万人とする―。昨年は186社、5062人だった数字はリーグ戦を終えた段階で1006社、8692人を数えている。 平均観客数は目標に届かなかったものの、前年比約172%増はJ3を含めた52のJクラブで最大の伸び率を示した。川森社長はどのような手法を用いて、福岡の経営を生まれ変わらせたのか。 東京都出身で高校入学直後までは野球少年だった川森社長が、見知らぬ土地でサッカーと接点をもったのは昨年9月。福岡市に本社を置くシステムソフト社が約1億円を出資し、約2800万円の債務超過を解消させて福岡のJリーグ退会危機を回避させたことがきっかけだった。 そして、経営を安定させるために、同社の親会社であるアパマンホールディングスから取締役として福岡の経営に参画したのが川森氏だった。